長編国際コンペティション部門にノミネートされた映画『あなたなしでは生きていけない』が上映された。

本作は台湾の俳優レオン・ダイ監督の長編作品。ある貧しい父親の愛情を描いた物語である。

ある漁村に娘メイと二人で貧しく暮らしている中年男のウション。娘の母親は、子供を産んですぐに彼のもとを去っていた。娘が学校に入学する年齢になり、戸籍の登録が必要となるが、ウションは法律上、父親として登録出来ないことがわかる。
メイの母親はウションと暮らしていた当時、すでに別の男と結婚しており、今は行方もわからない。ウションはメイを学校に連れて行きたい一心で奔走し、暴挙にでてしまう。映画の核である親子の強い絆は、情感を揺さぶる感動作となっている。

上映終了後、製作・脚本・主演(父役)を務めたチェン・ウェンピンさんが登壇し、客席からの質問に答えた。

■質疑応答■

Q潜水作業のシーンはどのように撮影されましたか?

「海中でのシーンは私たちにとって大きな挑戦でした。なぜなら台湾は、昨年大きな8つの台風に見舞われ、撮影のタイミングがとても難しかったのです。レオン・ダイ監督と打ち合わせて、私ともう一人のカメラマンで海中に潜り撮影をしました。潜水のシーンは全部で1週間かけて撮影しました。」

Q主人公のウションは大人というより、子どものようなイメージ。逆に娘のメイは大人の女性のような落ち着きが感じられます。単純な親と子どもの関係というより、男女の関係にも見えました。そのような演出の意図はあったのですか?

「ウションは教育のレベルが低く、他の人間との関係性が無いまま、父親となり、未だ父としての自覚に目覚めていないためそのような印象をうけたのかもしれません。逆に娘のメイは生まれながら母親のような役割を担っていたために、大人の落ち着きが見られる。このような現象は、片親にはよくあることではないでしょうか。」

Q美しい空や海など、映像そのものにも感動しました。普通カラーで撮影するところをあえてモノクロにした理由を教えてください。

「非常にシンプルなストーリーなので、モノクロに決めたわけです。余分なものをそぎ落とし、一番シンプルな形で観客のみなさんにお見せしたいと、初めの段階から決めていました。また、私は日本の黒澤明監督に強く影響を受けています。」

(Report:椎名優衣)