SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2009:長編海外コンペティション部門『鷹匠の息子』プロデューサーが登壇
『鷹匠の息子』は、広大で美しいモンゴルの大地を舞台に描く、ひとりの少年の成長物語である。
大都会ウラン・バートルに憧れる12歳のバーゼバイは、自分の故郷、西モンゴル地域に広がる牧草地を出ていく日をいつも夢見ていた。だが彼の父親は、いつか息子が自分の跡を継いで有名な鷹匠になってくれることを願っていた。
雪が残る山、赤茶けた大地、ヤギやらくだとともに生きる遊牧民や、雄大な映像にオープニングから引き込まれる。また、お坊さんが使う携帯電話や遊牧民の生活に入り込む電気製品などモンゴルのリアルな姿も映し出されている。
来日出来なかった監督のレネ=ボー・ハンセンさんからは、「この作品は、若い観客のためのアドベンチャーストーリー。少年が父のような鷹匠になるため旅に出て、過去と現在と未来が絡み合う青春物語は、フィクションという物語に支えられた、世界に通じるテーマ性を持っている。」とコメントを寄せた。
上映終了後、本作のプロデューサーであるスタッファン・ユレーンさんが登壇し、観客からの質問に答えた。
■質疑応答■
Qスウェーデンとドイツの共同製作で、子ども向けに作られていると思いますが、子どもたちにどんなメッセージを伝えたかったのでしょうか?
●スタッファン・ユレーンさん「自分自身、動物と子どもが中心となって描かれた冒険物の映画が大好きでした。子どもが冒険を通して成長していく姿を、子ども自身が感情移入できるような映画にしたかったんです。鷹と共に一歩を踏み出す青春物語になっています。」
Qモンゴルの大自然がとても印象に残っています。映画に出てくる大自然の風景や、都会に溢れる貧困や環境破壊の現状など、何かメッセージが含まれているのですか?
●スタッファン・ユレーンさん「現在のモンゴルは、開発がすすみ活気に溢れています。しかしその反面、自然破壊や治安の不安定さなどの問題もあります。特に自然破壊や社会問題をうったえようとしたわけではありませんが、自然の象徴である鷹と人々の関係は強く描きたかった。彼等は、鷹を死ぬまで拘束する事はしません。「鷹を自然にお返しする」という契約を伝統として受け継いでいます。30〜40年の鷹の寿命の中で、10年間だけ自然からお借りして、あとは自由にします。その契約を破ると、災いが起こるとも言われているのです。」
Q鷹がとてもいい演技を見せています。鷹匠や鷹についてお聞きしたいです。
●スタッファン・ユレーンさん「鷹匠になるのはとても大変で、いい鷹匠といい鷹は、人々から敬意を払われています。現在の鷹匠は、生きるために狩りをするというよりも、伝統を継承するために存続しています。伝統を非常に大切にしていて、年に1度開催される鷹祭りは、年々大規模になっています。」
「鷹の撮影自体は、やはり大変でした。映画を撮る時、動物と子ども映画は避けろと言われていますが、本作は鷹と子どもがメインの映画です。鷹を3羽おかりして、工夫しながら撮影は行いました。」
Qキャスティングはどのように決定したのでしょうか?
●スタッファン・ユレーンさん 「主人公のバーゼバイは、私たちスタッフが鷹祭りに行く途中に出会った少年です。馬に逆さ乗りして現れた彼は、私たちの車に近づき、映画に出演したいとアピールしてきました。彼に才能を感じ出演を決定しました。バーゼバイの本当の家族にも出演していただき、信頼関係から自然な演技になっていると思います。バーゼバイの兄・ハンはプロの俳優さんですが、その他の出演者のほとんどはバーゼバイの部族の一般の方です。」
(Report:椎名)