ベルギー・チリ・キューバ・スイス・ウルグアイの各国が協同製作した『少女マサンへレス』。
ウルグアイの市民戦争を舞台に、混沌とした大人たちの社会の中で生きる一人の少女の物語だ。

1966年、ウルグアイ。優秀な政治家・アウレリオを父に持つマサンヘレスは、7歳の時に母を自殺で亡くした。世の中は市民戦争で苦しんでいる。彼女が生き残るためには、アウレリオの自分勝手な家族たちに順応して生活するしかなかった。

本作上映後、ベアトリス・フローレス・シルバ監督が登壇し、挨拶を述べた。
「日本の反対側からやってきたので、私の作品を観て観客の皆さんがどのように思ったのか、とても興味があります。私はウルグアイ出身ですが、ベルギーでの外国生活を余儀なくされました。なぜならば、ウルグアイは軍事政権下にあるからです。又、長いこと映画を作れない時期がありました。その時期はウルグアイ映画の発展に貢献するために時間を費やしていました。ウルグアイという小さくて遠い国の映画を観て頂けて大変嬉しく思っています。またこの作品のために、ウルグアイ以外の他の国々が協力して下さったことを嬉しく思います。」

以下Q&A

Q、1966年の市民戦争時代を描いた理由は?

「この時代はウルグアイや他の南米諸国にとっても重要な時代でした。また、残酷な軍事政権でもありました。それまでウルグアイは、穏やかな民主主義の国でしたが、ある日突然生活が変わったのです。ですから私にとって大きな意味を持つ時代であり、興味がある時代でもありました。また、この時代を舞台にマサンへレスと他者との対立を描けば、マサンへレスは優しくて、人を思いやる心を持つ子であり、一方他の登場人物は自分の事しか考えていないという対立構造が際立つのではないかと考えました。当時ウルグアイは、色々な立場の考えがありました。広い思想的な背景がある時代を使って、深くテーマを掘り下げたかったのです。」

Q、上院議員の決闘シーンは、政党政治が無力であったことを象徴していると感じましたが?

「実際に決闘は80年代まで行われていました。個人的にも私の父が二度ほど決闘をしています。決してこの決闘シーンは象徴的な意味で描いているわけではありません。現実的なものを描いています。この映画が私の自伝かと言えば、厳格には自伝的な作品ではありません。」

Q、兄弟が関係を持ってしまうシーンがありましたが、道徳的にどうなのでしょうか?

「この映画のテーマは慈愛とエゴイズムです。人間的なものを体現して欲しかったんです。二人は兄弟として過ごしてきていないので、二人が兄弟であろうと関係ない。ただ愛の営みを描きたかったわけで、道徳的な問題は考えていません。」

(Report:竹尾有美子)