SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2009:長編コンペティション部門『ノラの遺言』Q&A
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭・長編コンペティション部門で初のノミネートとなるメキシコ映画『ノラの遺言』。
本作は、暮らしている人々の大半がカトリック教徒というメキシコで、あえてユダヤ教信者の自殺と残された家族という難題にスポットを当てている。
豪華な食事のレシピに美しいテーブルセッティング…全ては自分の死後のためだった。
近所に住む元夫のホセに自分の遺体を引き取らせるため、ノラは死ぬ前にある計画を立てる。しかし、ベッドの下に忘れられたミステリアスな一枚の写真が唯一の落とし穴となり、完璧だった彼女の計画を予想外の結末に導いてゆく。
上映終了後、本作が初の長編ドラマ作品であるマリアナ・チェニッリョ監督が登壇し観客からのQ&Aに答えた。
以下Q&A。
Q,大変素晴らしく宗教や人間関係が描かれていたのですが、どのように作品を構成されていったのですか?
A,本作は大変私に身近な話なのです。フィクションですが私の祖母の話も入っています。
Q,喜劇的な要素が多く見受けられましたが、メキシコ人の方の反応はどうでしたか?
A,メキシコの方々も細かな部分に気づき、予想以上に笑ってくれました。
Q,本作を演出した際に心がけたことは?
A,脚本に細かな部分を書き込んでいましたが、主演であるフェルナンド・ルハンさんを中心に演出し、彼の要求には臨機応変に対応していきました。しかし、撮影中に出て来た自然な言葉はそのまま使ったりしています。またフェルナンド・ルハンさんは100作品以上もの出演経験があり、メキシコでは大変有名な俳優さんです。
彼はとてもチャーミングですが、時折頑固な所もありました。完成した作品に対しては彼も大変愛情を持っていて満足しています。
Q,本作では、自殺してしまった妻・ノラを詳しく描かずに、別れた夫・ホセを中心に描いていますが、なぜ彼の立場から描いたのですか?
A,本作で描きたかったことが死や自殺ではなく、残された家族や人々がどのように死を乗り越え、向き合っていくのかという所だったからです。
Q,ラストシーンでなぜノラは埋葬して貰えたのですか?
A,ユダヤ教にとって自殺は大変デリケートな問題であり、現在でも論議の的となっています。本作で描かれているようにユダヤ教の中でも自殺に対する2つの考え方があります。
”人の頭の中で起こっている事は誰にもわからない。”という考えと”自殺は神への冒涜である。”という考えです。彼女が埋葬してもらえたのはホセが相談したラバイが前者であったからです。ホセの宗教上の立場はユダヤ教ですが、神を信じていません。
(Report:大野恵理)