監督フレディ・マス・フランケサさんが自身の祖父がアルツハイマー病であった経験をベースに、アルツハイマー病患者とその家族へのオマージュを込め制作した映画『めざめ』。

8歳の時に母親に捨てられたマルセルは、祖父パスカルの元で、たくさんの愛情を受けて育った。時が過ぎ、21歳になったマルセルは、唯一の家族である祖父の元を去り、ガールフレンドと暮らしたいと思うようになる。
無駄のない映画作りが信念であるフランケサ監督の独特の切り口で展開していく本作は予想し得ない強烈なラストに多くの観客が衝撃を受けていた。

本作上映終了後、来日を果たすことが出来なかったフランケサ監督に代わって、スペインから来日された本作のプロデューサーであるホセ・ルーベン・ギジェン・ゴンサレスさんを迎えてQ&Aが行われた。

以下Q&A。

Q,この作品の時代背景はいつですか?

A,前半は1989年、後半部分は2001年です。映画の撮影地となった場所は、私の生まれ故郷であるモレリヤと言う町で、ここは今でも古い町並みが残っています。

Q,映画のラストに母親と再会しましたが、母親の話すドイツ語に字幕が付けられていませんでした。これは意図的に字幕を付けなかったのですか?また母親は息子だと気づいていたのですか?

A,母親はまったく気づかなかったのです。字幕に関してはオリジナル版であるスペイン語バージョンにも付いていません。母親がドイツ語で何と話しかけているのか主人公がまったく理解できなかったのと同じように、観ている観客にも同じ感覚を味わってもらえるよう意図的に付けませんでした。

Q,なぜ息子は母親に対して自分が息子であることを名乗らなかったのですか?

A,はじめ主人公は母親を探しにベルリンへ行きます、その時は祖父の死など伝えたいことがたくさんありました。しかし、実際に母親と再会したがまったく息子であるということに気づいてもらえなかった時、主人公は母親の髪の毛を再び撫でる事が出来たことで、もういいやと過去と決別し、新たな道へ進もうと決意しているのです。

Q,アルツハイマー病と戦う祖父役の俳優さんの演技が大変素晴らしかったのですが、撮影前に勉強されていたのですか?

A,祖父役を演じた俳優は確かにかなり練習し撮影に望んでいました。また、アルツハイマー病であった祖父との闘病体験を持つ監督と綿密に打ち合わせしていました。
監督の母親が完成した映画を見たときに、自身の父親を思い出したくらい忠実に再現されています。

(Report:大野恵理)