リベリアの元少年兵を起用し過酷な内戦に翻弄される少年たちをリアルに描いた衝撃作『ジョニー・マッド・ドッグ』。

15歳の少年兵ジョニーは全身を武装し、コマンド部隊の仲間とともに、目の前の人間を無差別に殺害し、強奪を繰り返していた。
一方13歳の少女ラオコレは、少年兵たちから村を追われ、傷ついた父親と9歳の弟を連れて逃げ延びようとするが・・・。
地球の裏側では何が起こっているのか?
決して目を背けてはいけない”少年兵と戦争”問題をリアリティー溢れる映像が痛烈に観客に投げかけてくる。

本作上映終了後、来日を果たすことが出来なかったジャン=ステファーヌ・ソヴェール監督に変わって、撮影監督を務めたマルク・コナンクスさんを迎えてQ&Aが行われた。
登壇したマルク・コナンクスさんは、「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭に選ばれた事を大変嬉しく思っています。4Kデジタル上映という大変質の高い中で鑑賞頂けて良かったです。」とまず始めに映画を観賞し終えた観客へジャン=ステファーヌ・ソヴェール監督からのメッセージを伝えた。

以下Q&A。

Q、撮影地であったリベリアの政府は映画制作に関してどのような対応をしていましたか?

A、現在世界の色々な国々に少年兵は存在しています。
ジャン=ステファーヌ・ソヴェール監督は実際に各国を訪れ、本作の撮影に協力的な政府を探していました。その結果、本作の撮影地であるリベリアに行き着きました。
撮影当時リベリアは新しい女性の大統領が選出されたばかりで、撮影に対して警察やガードの設置など大変協力的な姿勢でした。新大統領は、この映画を通して、内紛を終え新しい国としてのスタートを切ったリベリアを世界にPRしたかったそうです。また国連も本作の制作に対して大変協力的でした。

Q、本作では、2人の女性が大変印象的な描かれ方をされていましたが、ジャン=ステファーヌ・ソヴェール監督も女性は強いと感じていたのでしょうか?

A、ジャン=ステファーヌ・ソヴェール監督は、本作を通して戦争がもたらす残酷さ・醜さ・悲惨さを見せたかったのだと思います。また今なお世界に30万人以上も存在している少年兵問題を提起したかったのです。特に監督は戦争には希望がないという事を描きたかったのです。
実際に少年兵として戦争に駆り出されていった子供たちの多くが亡くなっています。本作を観て頂いた方々に、戦争は馬鹿げた事であり、大変悲惨な行為であると感じて頂ければ幸いです。
監督も私自身も女性は強いと思います。

Q、映画の最後に政府軍が負け、ゲリラ軍が勝ち、残された少年兵たちの行方は描かれていませんでしたが、彼等の行方は?

A、本作に出演している少年たちは全てプロの役者ではなく、ジャン=ステファーヌ・ソヴェール監督が町や郊外から見つけてきました。彼等の多くが実際に少年兵としての経験を持っていました。そのため実際にあった事を再現しているだけあり、彼等の演技は真に迫るものがありました。
少年兵たちの戦い方はむちゃくちゃで、その多くが薬物などの力を借りて戦っていました。そして内紛が終わった今彼等は、生きるすべを失いストリートチルドレンとなっています。
私たちは撮影後彼等を支援するための基金を設立しました。

Q、大変リアルであった戦闘シーンも再現ですか?

A、すべてセットから作り上げたフィクションです。はじめに子供たちを一度集め動きの説明をし、リハーサルそして撮影へと流れていきました。

Q&A終了後に同席していた瀧沢ディレクターが「本作に出演していた少女の瞳が大変綺麗で全てを見透かされているようでした。ラストの彼女の涙の意味は?と心に残る作品です。」と述べ締めくくった。

(Report:大野恵理)