2009年7月12日、日曜日。
短編コンペティション部門3の3作品が上映され、『It’s All in the Fingers』の監督・石川慶、『遺品整理屋 未来堂』(土田豪介監督作)の脚本兼出演・大嶺秀平、『つるかめのように』の監督・手塚悟と、出演者である母役・天田光子と父役・中田顕史郎の5人が登壇し、観客からの質問に答えた。

石川監督はポーランド国立映画大学で演出を学んだ経歴の持ち主で、『It’s All in the Fingers』はポーランドで制作したものである。
物語は3部に分かれているが、共通して“巨大な「指」が出現する”ことで日常をシニカルな眼で切り取っている作品だ。

石川監督は「本作には、何かメッセージが込められているのでしょうか」という質問に対して、「私はもともとコメディを作りたかったのですが、今までポーランドっぽい暗い映画ばかり製作してきました。そこで、初のコメディを作ろうという話になり、本作の完成に至りました。メッセージを込めてはいますが、基本的には楽しんでいただきたいと思っています。
コメディは、文化間によって面白いものが違うと思います。次回作のために、また暗い話を書いていますね。最近私は暗いんですよ(笑)」とはにかみながら語った。

『遺品整理屋 未来堂』は少子高齢化・核家族化が背景となっている作品。
独居老人の孤独死が社会問題となる中で、遺族に代わり遺品の整理と廃棄を請け負う‘遺品整理屋’を描いたハートフルコメディである。

はるばる南の島・沖縄から駆けつけた大嶺さんが「皆さんこんにちは。ご機嫌いかがですか!」と沖縄の言葉で挨拶した途端、会場は明るい雰囲気に包まれた。
脚本に加えて出演もすることになった経緯等については、「沖縄で撮影したのですが、ノーギャラで出演をしてくれる人がなかなかいなかったんですよ。そのうち、監督から「オメー、でろ!」と言われたんです(笑)。私の役は“昭和44年生まれ”という設定ですが、実際には私は24歳です。また、次回作は沖縄らしい青い空と青い海を映した、さわやかなロードムービーを作りたいです」と、笑いを交えながら語った。

『つるかめのように』は、高校入学を迎えた娘と両親の3人が過ごす、朝のひと時を描いた物語。
日常的なようでいて、いつもとは違う3人の想いに心が打たれる感動作だ。

手塚監督は次回作について、「私たちは“Color Clips”という名で映画制作をしているのですが、そのように、色々な色の映画を作っていきたいですね。本作は良い作品に仕上がったので、逆に次回作は、この映画祭では上映されないような、ひどいやつを作りたいです(笑)。あと、本作の続編として、娘の嫁入り前を描いた作品も作りたいです」と教えてくれた。

母役の天田さんは、自身が演じた役について次のように明かした。「こういう晴れがましい席は初めてなので嬉しく、感謝しています。命をテーマにした本作でこのような役を演じたことで、1日1日を丁寧に過ごしていきたいと、改めて思いました。演じている時には、前の日に一睡もできず、しんどかったですね。撮影では感極まって気持ちが爆発したことがあります。号泣した後は、気持ちまですっきりしてしまったので大変でした(笑)」。

また、天田さんの話を聞いて、父役の中田さんは「天田さんは本当に一睡も眠れなかったようですね。彼女はファンキーな人で、撮影現場では一番年上にもかかわらず、一番子供みたいな人でした」と天田さんの印象を明かしてくれた。

(Report:今井理子)