7月9日(木)、ドイツ文化会館ホールにおきまして7月25日(土)よりBunkamuraル・シネマにて公開いたします映画『クララ・シューマン 愛の協奏曲』の特別イベントが行われ、わずか9歳でピアニストとしてデビューしたクララ・シューマンと同じく、才能ある9歳の少女ピアニスト・石川美羽(いしかわみう)さんによるピアノ演奏と、特別ゲスト・指揮者のユベール・スダーン氏(東京交響楽団 音楽監督)によるトークイベントを行いました。

演奏曲目:ロベルト・シューマン こどものためのアルバムOp.68より20番と21番
    色とりどりの小品Op.99より4番、1番、2番
子供の情景Op.15より13番「詩人は語る」

■石川美羽さんのピアノ演奏終了後のスダーン氏のコメント
演奏を聴いて非常に素晴らしいと感じました。未来の中村紘子さんがいるのではないかと思いました。特に、デリケートに素晴らしいメロディをとても繊細に演奏されたということに非常に感銘を受けました。演奏が聴けて幸せでした。
ロベルト・シューマンは若いときから知性的で野心的でもあり、少し変わったところがありました。クララは優れた人間性を持った女性で、少女の時にロベルトに出会いました。彼女の父親がロベルトにピアノを教えていた時、ライプチッヒで二人は出会っています。クララは9歳で演奏会デビューしているのですが、とても才能があり、成長して大変有名なピアニストになりました。その当時、クラシックのコンサートはとても大きなホールで行われており、観客は一般の方たちでした。現在に置き換えると、クララはポップスターのような存在でした。当時はリストやショパン、メンデルスゾーンが同じ時代に生きていて、ロベルトはワーグナーやベルリオールと交流を持ち、一緒に素晴らしい音楽を作り上げるという、音楽的にとても重要な時代だったと思います。また、現在ライプチッヒやドイツにある楽団もその時代に設立されました。ロベルトとクララの関係は単純なものではありませんでした。クララはとても現実的でしたが、ロベルトは夢見るようなところがあり、結婚した後クララが演奏旅行に出かけてしまい、(ロベルトは)孤独で一人では何も決められないようなところがありました。そのような時、二人はブラームスに出会いました。彼はハンブルクから自分の楽譜を持って尋ねてきたのです。それから二人ともブラームスの熱心なファンになりました。ブラームスこそ、クラシック界の救世主であると感じたのです。ロベルトは他にもメンデルスゾーンとも交流を持ちました。ロベルトの最初の交響曲はメンデルスゾーンが演奏しました。こういったハーモニーは今では不可能では、と感じます。というのも、作曲家同士のコミュニケーションがとりづらくなっており、それぞれがそれぞれの世界で作曲をし、お互いに影響しあうということがなく、偉大な作曲家が生まれにくくなっていると思います。

わずか9歳の石川美羽さんは、緊張することなく素晴らしい旋律を聴かせてくれました。今後の活躍に期待が集まります!2009年のシーズンでシューマンとブラームスを中心にしたプログラムを組んでいる東京交響楽団の音楽監督であるユベール・スダーン氏からは、クララ・シューマンやロベルト・シューマンそしてヨハネス・ブラームスが出会った時の様子や、彼らが活躍した当時のクラシック界の様子をうかがうことができ、多くの音楽家への想いを馳せる中、映画「クララ・シューマン 愛の協奏曲」の上映となりました。