SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2009のオープニング作品は、日米共同プロジェクトによって復元された黒澤明監督の不朽の名作であり1951年ベネチア国際映画祭(金獅子賞受賞)、1952年米アカデミー賞名誉賞(最優秀外国語映画賞受賞)と国内外から賞賛を浴びている『羅生門』の4Kデジタル復元版が上映された。
デジタルシネマの急成長によって半世紀以上の時を経て、鮮やかに蘇った映画『羅生門』。

上映に先立ち、天野ゆに子さん(角川映画)から資料映像と共に復元行程の解説が行われた。

デジタルリマスターには国立フィルム・アーカイヴ、フィルムセンターの支援を受け1962年に制作された『羅生門』の上映用プリントが使用され、アメリカ・ロサンジェルスにある施設にて作業は行われた。

上映時についた傷の数を長さに換算すると9.6km、汚れの数の合計は2500万個に及び実に膨大な量であった。
ある程度の傷は、コンピュータが解析し修復作業を行うが、最終的なチェックは人の手によって行われる。
本作も40人以上もの技術者が同時に作業を行った。
デジタルリマスターによって修復された映像では肌の質感までもがクリアになっていた。
資料映像で修復以前の映像と修復後の映像を見比べた観客からは驚きの歓声が上がっていた。

今回は映像だけでなく、日本語の声量をクリアにするために音の調整がロサンジェルスの施設で行われた。
その作業も地道なもので、アメリカとの共同作業という事もあり、劇中で度々流れていたセミの鳴き声をアメリカ人の技術者にノイズ音と勘違いされ危うく全て取り除かれてしまういそうになったという文化の違いから生じたエピソードも紹介された。

(Report:大野恵理)