渋谷ユーロスペースで26日(金)までレイトショー公開中の入江悠監督の『SR サイタマノラッパー』。
埼玉県を舞台に、レコード屋もクラブもない地方都市で、東京でライブすることを夢見ているラッパーの若者たちを描くヒップホップ青春映画だ。
連日ゲストを迎えてのトークイベントも開催され、6月22日(月)のゲストはRymsterの宇多丸さん。自身のラジオ番組「ウィークエンドシャッフル」の映画批評コーナーで本作を激賞している。
登壇して開口一番「この映画は俺が一番よく分かってる!」とまず宣言。劇場での鑑賞は今回で4回目、毎回号泣してしまうどころか、結末を知っているだけに号泣するポイントがどんどん早くなってきていて、ラストシーンではもはや涙でなにも見えてない!と宇多丸さん。90年代のヒップホップシーンを牽引した“さんピンCAMP”で活躍したリアルラッパー宇多丸さんからの共感の言葉に、さんピン世代の入江監督はひたすら感激の嵐。
劇中の中盤のハイライトシーン“市役所の大人たちの前(=完全アウェイ)でライブ”というそら恐ろしい場面については、今や“キング・オブ・ステージ”の宇多丸さんですら同じような経験が過去にいくつもあるのだという(最近でもギャラクシー賞受賞式の際にまた同じ経験をしたとか…。詳細は「ウィークエンドシャッフル」ポットキャストをチェックしよう!)。
ライブ中に無意味に2PACの写真をオーディエンス(というか市役所の人)に向けて得意げに掲げてみせたり、言動すべてが全国に多数存在するであろZEEBRAかぶれの若者の姿を完全に再現してみせているところ等を指摘しながら、それぞれのラッパーのキャラクターのリアリティある演出についても絶賛した。
「役者さんたちには最初は誰かの真似から入ってもいいから、最終的には“自分のフロウをつかめ”、とずっといっていました。みんなキョトンとしていましたが(笑)」と入江監督。
それぞれのキャラクターのラップのリリックも、入江監督がネタのポイントだけ書いたものをヒップホップ監修の上鈴木伯周さん(伝説の先輩・TKD役で出演)が韻など踏まえてリリックに起こし、そしてそれぞれの役者が演じているという二人羽織りならぬ、三人羽織り状態で劇中のヒップホップクルー“SHO-GUNG”を作り上げているのだ。
イベントのラストには“SHO-GUNG”たちも登壇し、メインテーマ「俺らSHO-GUNG」を生ラップ&ボイスパーカッションで披露。最初は笑顔で見ていた宇多丸さんもやおら立ち上がると、主人公IKKUからマイクを奪い取ったかと思うと突如フリースタイルに突入。会場、大興奮!!なのはいうまでもありません。最後はラッパーとしてラップでこの映画にレスポンスを返した。
「日本語ラップって、恥ずかしいっ!!…でも素晴らしい。」宇多丸さんのこの日のこの言葉は、まだはじまったばかりの日本のヒップホップ映画史にとって、は歴史に刻まれる名言となるのではないだろうか。

渋谷ユーロスペースでは、連日ゲストを迎えてのトークイベントも予定されている。

6月23日(火) ゲスト:渡辺ペコさん(漫画家)
6月24日(水) ゲスト:切通理作さん(文化批評)
6月25日(木) ゲスト:久住昌之さん(漫画家)
6月26日(金) ゲスト:スタッフ&キャスト舞台挨拶
※最終日26日は“ゆうばり国際ファンタスティック映画祭”よりヒットを記念して「夕張メロンゼリー」の配布があります!

■公式サイト
http://sr-movie.com/

(Report:綿野かおり)