“日本映画界の異端児にして天才”奥 秀太郎監督最新作『USB』が6/6(土)よりシネマライズにて公開中ですが、翌週桃井かおりさんがLAより帰国し、このたび、奥 秀太郎監督はじめキャストの渡辺一志さん、桃井かおりさんが初めて揃い、下記のとおり舞台挨拶を行いました。

■月 日■ 2009年6月13日(土)
■会 場■ シネマライズ (渋谷区宇田川町13-17 ライズビル)
■登壇者■ 奥 秀太郎監督、渡辺一志、桃井かおり 蒼井里沙(司会)

司会:先週の土曜日より公開いたしました奥秀太郎監督最新作『USB』は、お陰さまで初日より大勢のお客さまにお越しいただいております。そして本日は素晴らしいキャストの皆さんが、ご挨拶に駆けつけてくださいました。   
    それでは、お呼びいたしましょう。奥秀太郎監督、主演の祐一郎役・渡辺一志さん、そして祐一郎の母親役で昨日ロサンジェルスから帰国されました桃井かおりさんです。拍手でお迎えください。
まず、桃井さんにお伺いしますが、奥監督と渡辺さんお二人との出会いは、2007年に奥監督が『カインの末裔』で、桃井さんが初監督作の『無花果の顔』でベルリン国際映画祭に参加された時とお聞きしました。そのときのお二人の印象というのはいかがでしたか?

桃井:そのときは、大きな映画会社がついていていっぱいのスタッフを連れてきている映画と、たった一人ぼっちでリュックを背負って自前で来ていた私たちがいました。それで、監督の映画を観たら「すごくおもしろくて、いいなあ」って思っていたので、道でばったり会ったときに、「何の映画の監督ですか?」ということで話しかけたのが最初です。映画祭は女優として行くのと監督で行くのは待遇が違っていて、非常に寂しい思いをしていたときなので、(奥)監督と情報交換をしたり、「私たちが勝ちたいですね」という話をしていました。

司会:そして、本作『USB』で出演依頼があったときはどのように思われましたか?

桃井:そのときに、監督が作る作品に出てみたいと思ったので、「こういう作品に誘って下さいよ」と言ったんですが、本当に誘うとは思ってなかったんで驚いたんですけど‥(笑)。でも、参加してみて、現場はすごい温度なんですよね。暑苦しいということではなくて、落ち着き方がすごいんですよ。何といっても渡辺さんですからね。今までに経験のない温度の中に居るという、経験したことのない気持ちいい現場で芝居をさせて頂きました。そして、出来上がった映画を観たらすっごく好きな映画でした。俳優がみんな良くて、色んな温度でみんなが存在していて、すごく発散してキレてる人もいるし、私達みたいによどんでいる時間もあって、その全部の時間を通過している主人公がいるという映画のテーマがいいので、久しぶりに面白い映画を観たなと興奮した日でもありました。だから今日来ているんです(笑)。

司会:それでは、監督にお伺いします。桃井さんに出演依頼をされてOKを頂いたときのお気持ちはいかがでしたか?

監督:僕が高校生の頃から色々な映画を観ていて、自分にとって憧れのヒロインのような存在だったので、いつか自分の作品に出演して頂けるような人間になりたいと思っていました。ベルリンでお会いして、桃井さんからお言葉を頂いていたので、ダメもとでご連絡したところ、僕らもびっくりしたんですが、ありがたいお話を頂けたので、心から感謝しております!

司会:元々渡辺さんが息子役で、桃井さんが母親役という構想があったのですか?

監督:最初から桃井さんということではなかったのですが、まず最初に渡辺くんに脚本を見せて母親役探しを相談していくうちに、「是非桃井さんにお願いしたい」ということになったので、ダメもとでメールを書かせて頂き、出て頂けることになりました。

司会:実際に撮影現場というのはいかがでしたか?

監督:ほんとに夢のような2日間でした。何も僕が言うことがないというぐらいありがたい時間で、この映画は桃井さんがあってこそ出来上がった作品だと思っております。

司会:それでは、続いて渡辺さんにお伺いしたいと思います。渡辺さんも普段は映画監督としても活躍されていらっしゃいますが、今回は奥秀太郎監督、桃井さんなどみなさんが映画監督という現場で、かなり変わった雰囲気だったのではないかと思いますが、いかがでしたでしょうか?

渡辺:そうですね、今回の出演者の中で演出という立場に関わったことのある方が結構な割合、8割ぐらいだったかと思います。僕もそうですが、桃井さん、野田秀樹さん、やくざ役の大杉漣さんの子分で出演していた岸さんという方も監督をされていますし、ヤン梁 ヨン英ヒ姫さんや大杉さんの娘役の江本さんも舞台の演出をされていたりと、みんな演出ということに関わっている方々が演技を独自の方法でされていたので、いわゆる役者さんにはない空気が出ていました。僕は全員の方と共演させて頂いたので、すごく楽しかったですが、その中でも特に桃井さんには本当にびっくりしました。桃井さんの前では言わなかったんですけど、一番やりやすかったんです。この映画の中で、たくさんの方と掛け合いをさせて頂いたのですが、本当のお母さんと話しているような感じがしたので、「役者さんはやっぱりすごいんだな」とその日の帰りにふと思った記憶があります。

桃井:はじめて渡辺さんのセリフを聞いたときに、私はすごく発声が悪い俳優で有名なんですけど、「今まで発声がよすぎたな」ということに気がついて(笑)、ものすごく緊張したのを覚えています。「もっと人間の音を出していないと、ここではなんか女優みたいにみえてしまうぞ」と思った記憶があります(笑)

司会:桃井さんにとって、渡辺さんも奥監督も新鮮だったということですか?

桃井:監督がやっぱりすごいんだと思うんですけど、静かで淡々とした現場でした。それで、現場に渡辺さんと2人で置いてきぼりにされて、スタッフが遠くにいるという印象なんですよね。だけど、映画を観たら大きく写っていてびっくりしました。いくらでも黙ったまんま2人でいるという感じだったので、おかしかったです。で、渡辺さんはいくらでも耐えられる人なんですけど、私は結構どうにかしようと安手に考えたりしてしまうときもありますが、あの現場はどんなに時間がかかっても構わない感じだったので、「巻きでお願いします!」みたいなテレビの軽さに慣れていたときにバシッと殴られたような気がして、いい感じでした。なので、あれから反省したので、またいい俳優になっていますよ(笑)

司会:桃井さんのお話を伺って監督はいかがですか?

監督:いやいや、本当にありがたいです(笑)。僕はいつも怒られることが多いので、そのように言って頂けてそわそわしています。本当に繰り返しにはなりますが、ありがたいの一言です。

司会:映画『USB』を製作するにあたり奥監督は、「見てみぬふりをする、あえてさける、くさいものにふたをするのが大好きな日本人」に対して、「いいかげんにしろ!」という憤りの気持ちが、ひとつの大きな動機と書かれています。桃井さんは現在、東京とロスにご自宅があり、日本とアメリカの両国で俳優としてお仕事をされていますが、何か感じられるところがありますでしょうか?

桃井:もうアメリカだからとか日本だからとか関係なくて、何が面白いかということや何に興味があるかということが私たちには一番大事なことになっているので、この映画が投げかけているテーマはすごく鋭くてきつい映画だけど、淡々としていたり、そのシーンそのシーンが面白かったりするんです。私は各シーンにウケてゲラゲラ笑っていましたが、後で雪のシーン辺りでゾッとするぐらい反省して、涙ぐみそうになりました。なんかボクシング映画を観たような感じで、男泣きするような感じ方をさせられました。説教臭さもないし、自虐的ですしね。渡辺さんには敵わないと思いますが、「この作品をショーン・ペンがリメイクしたいと言うんじゃないか」ってさっき言っていたんですよ。何かそんな感じの新しい映画だと思います。

司会:それでは、最後に来週は父の日ということで、今日ここにはいらっしゃいませんが、映画監督役でご出演の、今一番happyなパパ野田秀樹さんに、監督からお祝いのメッセージをお願いします。

監督:本当に普段お世話になっている野田さんがこうして全てを手に入れられて(笑)、ファンとしてもまた今後の作品を楽しみにしていますし、何でも手伝わせて下さいという感じです。おめでとうございます!

司会:それでは、最後にみなさまにメッセージをお願い致します。

監督:本当に今日はこんなに多くのみなさまに集まって頂いて、『USB』という作品を観て頂けたことに心から感謝しております。今日はどうもありがとうございました。

司会:以上をもちまして、舞台挨拶を終了致します。みなさまありがとうございました。