歌舞伎俳優・坂東玉三郎が主演として中国に迎えられ、迫真の演技が大きな感動を呼んだ昆劇『牡丹亭』。
2009年3月に中国・蘇州で公演されたばかりのこの臨場感溢れる舞台映像を、ドキュメンタリー篇、舞台篇と二部構成でお楽しみ頂けるシネマ歌舞伎特別篇『牡丹亭』の坂東玉三郎さん初日舞台挨拶を行いました。

■日時: 5月30日(土) 12時00分   
■会場: 東劇(東京都中央区築地4-1-1)
■登壇者:坂東玉三郎

ついに初日を迎えたシネマ歌舞伎特別篇『牡丹亭』。劇場の東劇には公開を待ちに待ったお客様が早朝から駆けつけ、満員御礼の中、舞台挨拶が行われました。

Q.初日を迎えての感想

今日は舞台挨拶をやるということで、なんだかそわそわして朝早く起きてしまいました。この作品自体、ドキュメンタリーと、昆劇の舞台をシネマ歌舞伎で上映するということは、正直どんなものになるか分からないというところから始まったものなので、歌舞伎でさえこんな朝早くから始まらないのに、満席で朝早くからお越し頂いて、本当に感謝の念に耐えません。ありがとうございます。

Q.昆劇、牡丹亭という題材を選んだ理由は?

梅蘭芳(京劇の女形の名優)と祖父と父が交流があって、素晴らしいお芝居だということを父から聞かされていて若い頃から中国の文化、演劇に憧れていました。また色んな日本の文化は西の方から流れてきたので演劇のルーツを知ることでは、ずっとシルクロードを考えていました。その中でもやはり梅蘭芳への憧れで、色々と勉強している中で昆劇にたどり着きました。
その中でも「牡丹亭」は梅蘭芳が昆劇を勉強している中で影響を受けた作品ということで、本当は日本語で「牡丹亭」の公演をしようと、音楽の勉強に中国にいった際に「1つ唄ってみない?」といわれて、唄ったら「唄えるじゃないか!」ということでだんだん事が進んでいき結局”遊園”という一幕を「全部やれ」ということになって、今日までの流れに至りました。

Q.全編中国語(蘇州語)で演じられたことについて。

尖った音や蘇州にしかない音、日本にない母音などをマスターするのが大変でした。現地の人が聞くと正確な発音ではないと思うと思いますが、ただ古典劇だったので歌舞伎以上に分かりにくい言葉だったので現地の人もすぐに解読できないことが救いでした(笑)

特に大変だったことは舞台に上がって言葉に詰まってしまった時。日本語だったら「あの〜」とか「えーと」とかいえるのですが、詰まったとたんに全部分からなくなるので何も言えなくなるんです。でも舞台ではお陰でつまらなかったんですけども(笑)

それとこれはエピソードの1つとして、1月に稽古をしているすごく寒い中、鬘をつけ衣装を着ている最中にいきなり停電になって真っ暗の中全員が慌てずのんびりずーっと待っていたことが今ではいい思い出です。

Q.2部構成にした理由

日本では昆劇というものをご存知でない方が多いので、ドキュメンタリーをつけたほうがいいんじゃないかと思って2部構成にしました。

Q.美の秘訣は?

昆劇のように襟が詰まった衣服、鬘の生え際で顔の狭い範囲しか見えないこと、これが美の秘訣です(笑)ほとんど首が見えず、顔の輪郭も隠れるので、あとは出ているところだけきれいにして、指の仕草などに気をつかえばきれいに見えます。ただ、こんな格好をして誰も道を歩けませんが(笑)