『ゆれる』の西川美和監督最新作 『ディア・ドクター』の原案小説「きのうの神さま」の発売を記念して、西川監督と最新作『空気人形』が現在開催中のカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で上映されたばかりの是枝監督のトークショーを行いました。

■日時:5月28日(木)18:00〜
■場所:タワーレコード渋谷店 TOWER BOOKS
■来場者:120人
これからの日本映画界を背負う話題の師弟対談ということで、熱心なお客さんが多数詰め掛け、会場は大盛り上がり。是枝監督だから知っている西川監督の助監督時代のアルバイトエピソードも飛び出し、会場は終始笑い声につつまれていました。

(登壇者コメント)
■西川美和(34):今日はお集りいただきありがとうございました。映画には予算や視覚的表現にしばりがあります。そういう意味で脚本からしばられてしまったものを書いています。だから、映画と並行してやると気持ちがいいんです。今回の作品は僻地や医療についてテーマにしているので、たくさん取材をしました。一緒にお酒を飲んで愚痴を聞いて。僻地のお医者さんってとても高潔な精神の持ち主のように思うじゃないですか。でも、結構そうじゃない部分もあるんですよ。自分で実際に飛び込んでみないとわからないこともたくさんありますよね。助監督時代、貯金が一ケタになってしまってハトバスの添乗員をしたこともあります。去年だったか一昨年だったかは自分で登録して工場で肉のパックづめもしました。とても楽しかったです。(監督のときとは違って)人に怒られる立場になって気持ちをリセットしたいという思いもあります。今回の映画は私の作品にしては救いがあるいい話なんです(笑)小説はノベライズではなく、映画の登場人物たちの過去や未来を描いた短編集です。映画のネタばれにもなっていないので是非小説を読んでください。

■是枝弘和(46):小説売れてるみたいだね。もう、増刷されているみたいだし。今回の作品はほんとに取材に時間をかけたんだなと感じた。やっぱり取材を通して普通の人と会わないと映画は作れないよね。フィクションだけでは生きたセリフが書けない。西川がリクルートスーツ着て添乗員の面接受けに行ったのは僕も覚えているよ。いっしょに取材も兼ねて働こうかという話になるんだけど、僕はサービス業できないからね。小さいころよく夢を見たし、前世はエジプトのファラオだったんじゃないかな(笑)西川にとっての小説が僕にとってはテレビのドキュメンタリーかな。両方がないと精神的な安定が保てないんだよね。(西川監督の書いた)本を読んで、肉体の描写が印象的だった。自分はこの秋に公開される「空気人形」で原作のある作品に挑戦したけど、自分の世界が広がった感じがした。自分の世界観だけではこの作品はできなかったと思うんだ。西川とは使いたい役者がかぶって競争みたいになるんだよね。こんな二人ですがこれからもよろしくお願いします。