3月31日に、北は北海道から南は沖縄まで、映画館スタッフの投票によって決まる初の映画賞「映画館大賞」の2008年度ベストテン作品が発表されました。5月22日〜29日にはユーロスペースにて、ベストセレクション作品をトークイベントつきで特集上映しております。全国の映画館スタッフたちが「ぜひスクリーンで観てほしい」と熱い思いを込めて選んだ作品たち、スクリーンで最も輝いた映画たちのアンコール上映に、続々と豪華ゲストの参加も決定し、5月24日(日)には映画館大賞の特別部門“蘇る名画”で選定された市川崑監督特集の中から貴重なフィルムである「愛人」が上映され、主演の有馬稲子さんが、思い出を語ってくださいました。

5月24日(日)  ユーロスペースにて
「愛人」 上映  トークゲスト:有馬稲子さん(出演)

女優有馬稲子が語る巨匠たちとの想い出

宝塚に所属していた有馬稲子さんは、1953年に映画界に転身。その年の東宝の顔として大々的に売り出され、市川崑監督作品『愛人』に出演しました。「市川崑監督はとても才気のある方で、この映画は私が映画界に入って初めて本当に演技をしたと思えた作品でした。当時の私は本当に俊敏ですね(笑)。自分で言うのもなんですが、感覚的に優れていたと思うんです。市川監督は斬新な方なので、この映画も少し早く世に出過ぎたと皆に言われていたんですよ」(市川崑監督『愛人』について) 
「『愛人』の中でテニスコートのシーンが出てくるのですが、実はこれは成城のさびれたテニスコートで撮影をしました。そのときに塀の奥から変な男の人がずっと覗いていたのですが、その人は大作家の横溝正史さんだったんですね。当時の私は横溝作品を読んでいませんでしたので、そんな大作家の家の裏だとは、まったく分かりませんでした」(作家横溝正史について)
「三国連太郎さんは、なんせ変わった方で当時から裸足で靴を履いていましたね。テニスのシーンでも最初は下手なふりをしていて私たちをくたくたにさせて、いざ本番になるとビシッと決めてくるというような人で、とても演技の上手な方でしたが、相手役としては相当に大変な俳優さんでした(笑)。」(三国連太郎さんについて) 
「東宝の後に松竹に移り、小津安二郎監督の作品にも2本出させて頂きましたが、コメディが大好きな私は、ホームドラマにあまり興味がなかったので、それまで小津先生の作品を一度も観たことがありませんでした。でも出てみるとやっぱりすごい監督でしたよ。他の組と違って禅の修羅場みたいでした。衣裳からコップの位置、お茶碗の位置まで監督がすべてお決めになって手の位置、顔の位置も決められて難しかったですね。でもあとから観ると、大変な効果があり、とても勉強になりました。(小津安二郎監督について)
日本映画の黄金期に多くの巨匠達と仕事をした有馬稲子さんの語る楽しいエピソードに、イベント時間の制限が大変惜しまれる貴重な機会となりました。

●映画館大賞の特集上映は、連日日替わり豪華ゲストをお迎えして5月29日までユーロスペースにて開催しております(詳細は上記HPをご覧ください)