映画『ユキとニナ』カンヌ映画祭<監督週間>記者会見
『M/OTHER』、『不完全なふたり』等の作品で、カンヌ国際映画祭を始め国際的に高い評価を受けてきた諏訪敦彦(すわのぶひろ)、そして、フランスの名優であり今作が初監督となるイポリット・ジラルドが、5年に及ぶ親交を経て、共同監督として完成させた、弊社配給作品『ユキとニナ』。
フランス人の父親と日本人の母親の間に生まれた“ユキ”と、友達のフランス人“ニナ”の2人の関係を通して、“親子とは、家族とは、夫婦とは何か”を真摯な視線で捉えていきます。フランスと日本を舞台に、ユキとニナのピュアでみずみずしい感性が、苦悩に満ちた大人たちの心をしだいに和らげていく、心に響くヒューマンドラマです。
来年2010年新春、恵比寿ガーデンシネマでの公開が決定しました本作が、現地時間の15日(金)午後、現在開催中のカンヌ国際映画祭<監督週間>での公式上映を前に、両監督による記者会見とQ&Aを行いました。
『ユキとニナ』記者会見&Q&A
Q1.二人の出会いと共同監督について
イポリット・ジラルド監督(以下、イポリット):最初に諏訪さんに会ったのは、2004年のことです。
諏訪さんが『不完全なふたり』の準備をしていた頃で、私を俳優として起用したいと思ってくれていたみたいだったのですが、この作品では実現しませんでした。その後も、電話などで話をしていくうちに、私と一緒に仕事をしたいと言ってくれて、それが『ユキと二ナ』の共同監督という形で実現したのです。
諏訪敦彦監督(以下、諏訪):私は、共同監督をやってみたいというのが、ひとつの夢でもありました。今までの私の監督作では、監督と俳優の間でシナリオや演技という形など
様々なコラボレーションをしてきましたが、もっと踏み込んだかたちで、一緒に映画を作る、共同性の中で作る豊かな映画にふれて入り込んでみたかったのです。共同監督は初めての経験でどうなるかわからなかったのですが、1本の作品としてこうして出来上がったことを大変嬉しく思っています。
カップルや兄弟という共同監督はよくありますが、私とイポリットはそのどちらでもない(笑)、めずらしい関係だと思います。
Q2.作品のテーマ=子供が主役の映画をどうして作ったかについて
諏訪:お互いに子供がいて、子供を育てるという体験を話していく中で、子供の視点で 映画をつくりたいと思いました。そして、子供に対する視点をどう映画で描くかを考える中で、徐々に映画の輪郭を作っていきました。映画の企画から撮影まで、時間がかかりましたので、どちらのアイデアだったかは、自分の中では区別はなく、うまくとけあった感じがします。
イポリット:ユキと二ナという二人の子供が、さまざまな出来事を乗り越えて、生きていく…という姿がとても面白いと思います。
私には、映画を作る方法論がなかったので、とても得難い体験でしたし、諏訪さんと子供たちと一緒に、こういうかたちで仕事ができたことは、今でも信じられない思いです。
他の人や他の子供たちとはできない、「私たちの映画」が作れたと思います。
Q3.二人の子供たちの演出について
イポリット:子供に演技をしてもらう、ということになると、子供達は私たち(監督たち)に満足してもらうために演技をすることになってしまいます。特にユキ(ノエ・サンピ)は、
全くの素人で特に映画に出たかった訳でもない子でしたから、演技をすることを望むのではなく、彼女がどう表現するのかを辛抱強く待って、見守ることが重要でした。
ユキが私たちの案内人になってくれたのです。
諏訪:映画の中で子供を描くときに、よく子供を大人の感情の中に利用する、子供を大人が理解しやすい枠の中に閉じ込めてしまうことがあります。
私もその誘惑にかられそうになりましたが、子供は大人には理解しえないものとしてそこにいる(存在)するわけなので、私たち自身も、彼女たちがありのままでそこに(映画の中に)いてもらうことを大切にしました。
私もイポリットも悩みながら、試行錯誤しながら、子供たちとの関係を作り上げていったように思います。こうした経験を通じて「映画を作るということはどういうことか」ということを改めて学んだ気がします。そして、ノエちゃんはとても話の内容を理解してくれていたと思います。それは想像を超えた驚きでした。
イポリット:自分の(実際の)子供ですら、何を考えているか、何をしているかを理解することは難しいと思います。今回の映画を通じて、自分自身も考えさせられまたし、子供との関係を考え直させてもらいました。とても良い経験になりました。
(以上)