映画「カムイ外伝」の製作報告会見が行われました。

●会場:帝国ホテル 孔雀の間
●登壇者:松山ケンイチ、小雪、伊藤英明、小林薫、崔洋一監督

崔監督:
長い準備期間、撮影、そして現在のポスプロ作業と、苦闘の連続です。
このチームは、作品を完成させること、そして観客に喜んでいただいて成功することに、強い意志を持っています。心の中で手を結んでいるんです。
ぜひご期待ください。

松山:
僕にとって初めての本格アクション映画です。そして忍者という日本的な役です。僕がケガをして、一度撮影を中断させてしまったことがあるので、去年はこの作品を撮り終えることを一番の目標にしていました。
今年はこの映画を成功させることが目標です。自分の中で納得できる、最高の芝居ができたと思っています。

小雪:
私にとって、とても思い出深い作品です。お話をいただいたとき、正直このスケール感を実写化できるのか、初アクションはできるのかなど、戸惑いや不安もありました。今撮影を終えて、この作品で関わった人々とお仕事できて幸せだし、自分の力になっています。多くの人に感謝しています。

伊藤:
夏は暑いものですが、沖縄の夏は本当に暑くて大変でした。
みんなに支えられて乗り越えることができました。チーム一丸となって作った作品ですので、多くの人に観てほしいです。

小林:
本当に大変でした。夏の沖縄でロケするのは殺人行為に等しいくらい(笑)。
僕とカムイの出会いのシーンは、カムイが天井から跳び降りてくるシーンで、時代劇って面白いなと、現場で見ていて思いました。
楽しみに公開を待っていて下さい。

【質疑応答】
Q:アクション演出のコンセプトについて、どれほど過酷な撮影だったかに
ついて、CGの割合について教えてください。

崔監督:
初の時代劇であり久しぶりのアクションです。コンセプトはアクションと物語が乖離しないように気をつけました。忍者だから飛んだり跳ねたり、ワイヤーアクションがあったり、デジタル処理をしたり…一瞬ジョン・ウーか!?とも思ったのですが(笑)、やっぱり崔洋一はどこまでいっても崔洋一でありました。

過酷といえば過酷な現場でしたが…私自身が撮影に入ると別人格になるので(笑)。そもそも真夏の沖縄で撮影すること自体が過酷でした。
こう見えても私は、現場に入ると倒れたり点滴打ったりと、意外と繊細なのですが(会場笑)、今回は倒れなかったんです。若い人が熱射病になったりしていたので、私はちょっと優越感を感じました(笑)。
でも苦闘の連続だったことが、それを乗り越えていく熱情を生み出し、物語に広がりが出て、観客に気持のよい熱風を送り込んでくれると思います。

日本のポスプロは優秀です。時間とお金があれば海外に負けないものができると思います。ポスプロにこんなに時間をかけるのは初めてです。
前カットの2/3はCGです。また半分がデジタル合成しています。

Q:松山さんと小雪さんに。初共演ということですが、第一印象と、ロケを終えてのお互いの印象を教えてください。

松山:
初めてお会いしたのはアクショントレーニングの時間でした。別々で練習していて、僕が終了するときに小雪さんが入ってこられたのですが、第一声が「体、固っ!」で。ストレートな方だなぁと。今の印象としては、撮影中、精神的に弱くなっていたときに、スタッフやキャストの方と一緒にごはんを食べたりお酒を飲んだり、皆様にすごく気を使っていただいていたんです。小雪さんもその中のお一人でした。今回かかわった人たちはとても大事だし、絶対忘れないし、感謝の気持ちを返していきたいです。

小雪:
体が固いのと…(笑)、すごくシャイな方であまりしゃべらない印象が、最初はありました。カムイの役柄が孤独なのもあって、肉体的にも精神的にも疲れていられたとは思うのですが、この作品には皆の愛情や情熱が詰まっているので、それで、松山さんも前向きになっていけたのかなと思います。松山さんは不器用だけれど、皆様に作品を通して気持ちを返していく方で、出会った時とすごく印象は変わりました。

Q:本格アクションですが、トラブルや苦労、悩みなどがあったら教えてください。また母の日も近いので、こういったことをお母さまに相談したか、教えてください。

松山:
砂浜で走るのは想像以上に疲れました。練習したことが、砂浜の上だとできなくなって、びっくりしました。だからこそトレーニングをがんばりました。母に相談はしませんでしたが、ダメ出しはされました。
一緒にDVDを観ていて、カットごとにダメ出しするからへこんだりしました。

(母の日のプレゼントは?と聞かれて)
買ってありますけど、今言ったらわかっちゃうんで内緒です。

小雪:
思い出すときりがないです。頭と体は一体なんだということを、ここまで実感できたことはありません。体が動かないと、「もうだめなんじゃないか」と思ってしまって。希望が小さく見えるんです。そういう状況に陥ったとき、ベストな解決策があるだろうと模索したことで、精神的にも鍛えられたと思います。

母の日に関しては…一度も休まなかったので、母が自然食で育ててくれたからかなと思います。母の作ったご飯のおかげです。

伊藤:
とにかく暑くて、肉体的には自信があったけど、もうダメかなと思うこともありました。小さい頃忍者ごっこをやっていたから、これはリアル忍者ごっこだと言い聞かせていました。

母には心配をかけたくないから相談はあまりしませんが、密に連絡をとってはいます。

小林:
若いころからアクションをやっていたので、経験していてよかったなと思いました。

Q:忍者の役ということで、お気に入りの技、現代に使えそうな技を教えてください。

松山:
現代でやるとケガするからやらないでください(笑)。初めてワイヤーアクションをやったのですが、普通だとできない動きができるんです。
トレーニングしていて忍者というものの凄さを知りました。日本人がもともと持っていた体の使い方とか、今の僕にないものばかりで、ハッとしました。
これについてはこれからもトレーニングしていきたいし、習得できるようにしたいです。

小雪:腰を落として生活することなど現代の日常生活ではないので、大変でした。でも忍者の動きはできたら、現代でもいろいろ役立つと思います。

Q:いまなぜカムイ外伝なのでしょうか。

崔監督:
ポスターにもある「生き抜け!負けるな」という、僕の思いが込められたコピーですが、そういう精神が僕の中には脈々と受け継がれています。
僕は、今日的に、今、映画として、この作品を観てほしいと考えていました。
白土三平さんがこの作品を描いた40年前と現代ではその背景も違いますが、安穏と生活し、社会に平々凡々と生きているわけにはいかない世相や、世界の変貌も今はあると思います。一人の逃げる男と追う男たち、そして一人の逃げる女の姿には、生きること、すなわち喜びを阻害するものと戦わざるをえないいわば仕組みのようなものがあります。人は人と出会っていくという葛藤、この作品で表わされる忍者の掟のようなものに、僕は実感をもって出会うことができました。

かつての日本映画は色んな幅をもって、本当にエンタテインメントしていました。必ずしも現代はそうではないのかもしれませんが、お金をかけて、手間暇かけて「さあ、どうだ!!」と、そういう映画があってもよいのかなと思います。僕は40年前、10代の終わりごろから白土さんの漫画は読んでいて影響は受けています。そういう意味では、この作品には僕の奥底にある青春の部分も表現されているかもしれません。

Q:なぜ長いカムイ外伝の中から“スガルの島”を題材に選んだのでしょうか。

崔監督:
最大の理由として、まず“スガルの島”がアドベンチャーであることが挙げられます。長いこの作品のなかで唯一海を舞台にしたものであることに惹かれました。アドベンチャーとファンタジーの要素です。最近のエコ思考ではありませんが、自然と人間が対峙するのは大変なことですが、そこには生の喜びや生きる喜びが見いだせると思います。