今から約60年前、ドイツで独裁者として権力を掌握していたアドルフ・ヒトラーの名を知らないものは誰もいないだろう。それでは、同じくドイツ人の名門貴族出身将校クラウス・フォン・シュタウフェンベルクの事を知る者はどれくらいいるのだろうか?3年ぶりの来日となったトム・クルーズが今作「ワルキューレ」で演じた陸軍大佐シュタウフェンベルクは、第二次世界大戦末期ユダヤ人迫害など思想や政策に疑念を抱きヒトラー暗殺計画を企てた反逆者。絶対に忠誠を誓うべきヒトラーに背くも、彼は家族、国家、そして世界を守るため自己の良心に従ったのである。この史上類をみない規模で企てられたワルキューレ作戦は、ハリウッドの創り物ではない。全て実話に基づいた歴史の1ページなのである。

《会見レポート》
実在した人物を演じるのは二回目というトム。「ラスト・サムライ」の時は1年をかけて日本の歴史や文化について勉強したそうだが今回も役作りのために文献を調べたり自伝を読んだりして撮影に臨んだ。当時のベルリンを再現したセットでの撮影など事実に忠実に作られた作品ではあるが、映画としてエンターテインメント性を持たせたドラマとして観客を引き込まなければならないという点では大きなチャレンジだったようである。また、シリアスなシーンが多い一方で撮影現場は笑いが耐えない楽しい現場だったよう。砂漠での撮影には、出演者やスタッフの家族や友人が同行し、キャンプ生活を楽しんだ。第二次世界大戦で実際に使用された戦闘飛行機を操縦しエアーショーを披露した撮影裏話も。飛行機は実際に作品のワンシーンに登場するので要チェックである。厳しい面持ちで独裁者に立ち向かう凛々しい一人の男を演じたトム・クルーズだが、会見では終始笑顔で現在一緒に来日中の愛娘スリちゃんと日比谷公園で遊んだ話をするなど優しいパパの一面が伺えた。

(Report:峰松加奈)