映画『ホルテンさんのはじめての冒険』鉄道員を目指す学生と東急電鉄OB 特別座談会
全世界的な不況からくる派遣斬りや就職内定取り消しなど、先が見えない今の時代。だけど、何と言っても“技術を身につけた者が生き残る!”ということで、映画『ホルテンさんのはじめての冒険』の主人公が鉄道運転士という役柄に因み、鉄道業界への就業を目指す岩倉高校の生徒さんたちと、東急電鉄OBの方々が共に映画を鑑賞。
その後、大先輩から同じ世界を目指す若者たちに、先達としての経験やエピソードなどを語っていただくという座談会が行われました。
■日時:2月13日(金)
■会場:京橋テアトル試写室(中央区京橋1-6-13 アサコ京橋ビルB1)
■参加者:「電車とバスの博物館」館長代理 丸山豊様ほか、東急電鉄OB様4名、岩倉高等学校生徒様19名
MC:それでは、これより『ホルテンさんのはじめての冒険』の座談会を始めたいと思います。まず、OBの方々に映画の感想をお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか? 実際の業務との共通点など、感じたことをお願い致します。
OB:ホルテンさんの人生というよりも、もっと鉄道に絡んだ『鉄道員』みたいなイメージの映画かなと正直思っていました。ただ、ノルウェーにあんなにステキな列車があるんだなと思い、是非運転してみたいと思いました。
生徒:最初の方のシーンで、真っ白の雪原を列車が走る姿は、日本では見られないような光景なので、かっこいいなと率直に思いました。
MC:生徒のみなさんはほぼ全員運転士になりたいと思われているようですが、なぜ鉄道員に魅力を感じているのか教えて頂けますでしょうか?
生徒:まず、単純にかっこいいというのもありますけれど、鉄道は公共の交通機関の中で社会全体に直接役立っていると思うからです。
MC:それを受けてOBの方々にお伺いしますが、なぜ鉄道員という職業を選ばれたのでしょうか?
OB:当時はとても就職難で、東急の受験者が1200人、採用が80人という厳しい状況でしたが、幸い受かることが出来たのです。映画の主人公もそうですが、鉄道員というのは規律社会の中で生活しているので、本当にまじめだと思います。 ホルテンさんほど定年後に解き放たれたときの寂しさはありませんでしたが、駅長をしていたので、今でも電車のホームを歩くとつい主人公と同じような感覚を味わうことはありました。
それから、運転士を終えて20年間くらいは1年に1度くらい「いくらブレーキをかけてもかからない夢」というのを見ていました。運転経験のある周りの人たちに聞いたら、みんな同じような経験をしていました。運転士というのはかっこよく見えますが、しっかりした精神を持っていなければいけないと思います。
MC:次に生徒さんからOBの方に質問をお願いします。
生徒:鉄道員をやっていて良かったことと、嫌だったことはありますか?
OB:お客様から「ありがとうございます。」という言葉をもらえたときです。嫌な時は、「自分の蒔いた種を自分で刈り取れない時」です。私は運転を12年やっていて、良いことも悪いこともたくさんありました。ただ、小さい時から運転士になりたくて、偉くなりたいと思ったことはありませんでした。なので、目的を持って自分が満足できたときにはよかったなと思う反面、出来なかった時のくやしさはありました。でもそれは自分の経験として生きてくるので、自分に妥協しないように上を目指しながら、コツコツやっていくのがいいと思いました。
MC:鉄道員をやっていて、一番印象に残ったエピソードはありますか?
OB:多くのお客様を扱う職業なので、自分の思うことと実際と違うことがたくさんありました。自分が駅長をしていたときに、お客さんを守ることはもちろんですが、自分の部下を守らなければいけないという大変な経験がありました。つまり、普段の教育でもいざというときのことを想定はしていますが、想定外のことが起きたときに対応出来る体制を作ることが大切だと思います。
MC:それでは、鉄道員を目指す生徒の方々に、OBの方々から一言エールを送って頂きたいと思います。
OB:もし鉄道業界に入るのでしたら、3つ挙げたいことがあります。まず、1つ目は「健康」です。映画の主人公を見ていても、雪の中で運転しているように鉄道は24時間生きているのです。それに対応する為には健康を維持して責任を果たさないといけないと思います。そして、その次は「規律」です。今の社会ではうるさいと思われるかもしれませんが、鉄道の社会は法律に基づいているからです。そして、最後は「人間愛」です。これはお客様に対して感謝の心がないと上手くいきません。それから、先輩と仲間に対する感謝の気持ちが大切です。仲間同士の連携がないと鉄道員は務まらないので、絶対に必要なんです。なので、もしみなさんが鉄道員を目指すなら、この3つが大切だと私は思います。
MC:では、最後に生徒のみなさんが、この座談会を通じて何か感じたことはありますでしょうか?
生徒:実際に鉄道員として働いてこられた方のアドバイスを聞けて、とても参考になりました。
生徒:鉄道だけでなく、社会の中で人と人とのつながりは大切なんだなと思いました。
生徒:せっかくここまできたので、あきらめずにやり通そうと思います!
生徒:岩倉高等学校から初めてノルウェー鉄道に就職っていうのも良いですね!
MC:それでは、これで座談会を終了したいと思います。本日はありがとうございました。