巨匠チェン・カイコー監督が伝説的な京劇俳優・梅蘭芳(メイランファン)の栄光と孤独の生涯を描いた一大叙事詩『花の生涯 〜梅蘭芳〜』。3月7日の日本公開を前にチェン・カイコー監督はじめ、出演者が来日し、日本人キャストの安藤政信とともに21日に記者会見を行いました。
レスリー・チャンの再来と呼び声の高い新人俳優ユィ・シャオチュンの女形姿による京劇の演舞を行い、スペシャルゲストとして日本演劇界若手随一の女形で知られる早乙女太一さんも登壇しました。

約300人が来場し、立ち見で溢れた会場にチェン・カイコー監督、ユィ・シャオチュン、安藤政信が登壇。まずは監督が作品の思いを語りました。
『梅蘭芳があまりにも大きな存在なので、どのように描くか大変悩みました。京劇で初めて世界的に成功した人であり、京劇界でもっとも素晴らしい偉大な人です。しかし、私が描きたかったのはその成果ではない。素晴らしい成功を収めた彼にも様々な困難があり、紙のかせをはめられて生きていたんです。そんな側面を描きたいと思いました。彼はおだやかな君子のようであり、しかし内面には強い芯を持っています。人生、愛情を犠牲にしても命をおしまず芸に捧げた彼の精神的世界はきっと日本でも受け入れられるでしょう』

この作品は2009年第59回ベルリン国際映画祭コンペディション正式出品作品ということで、質疑応答では出品への思いを問う質問などがありました。

ユィ『こんなに素晴らしい映画に出演できたこと、偉大な人を演じられたことで満足していますが、ベルリン映画祭に出品されることはとてもいいニュースだと思います』

安藤『監督の演出は空間作りや照明の当て方などとても芸術的で、監督のすさまじい美意識には驚きました。映画祭への出品は嬉しいし、その作品に出演できたことを誇りに思います。私は日本では北野監督の作品でスタートを切り、今回素晴らしいチェン・カイコー監督の作品で中国圏のスタートを切らせていただきました。このことを本当に幸せに思います』

監督『カンヌ映画祭には参加したことがありましたが、ベルリン映画祭に出品するのは初めてなので、とてもうれしいです。作品を通じて、西洋人など違う文化の人々とコミュニケーションが取れることを幸せに感じます。このスタンスは実は梅蘭芳から学びました』

また監督は安藤さんに関して、『安藤さんはとても特別な個性を持った俳優です。初めて会ったとき、彼の目の強さに驚きました。彼は思いを目だけで伝える力があります』とコメント。

質疑応答のあとはユィ・シャオチュンが京劇『貴妃酔酒』の演舞を披露し、会場を魅了しました。
その後スペシャルゲストとして早乙女太一が登壇。3人に花束を贈呈し、ユィ・シャオチュンの演舞に関して
『私のやっている踊りとは体の使い方が全く違いますね。動きがとても細かくて勉強になりました。映画も大人の世界という感じで美しい作品だと思いました』と話した。

事前に早乙女太一の舞台の映像を見ていた監督とユィ・シャオチュンは、
監督『もし、早乙女さんがメイクアップをして来て、ユィと並んでもらえたらどんなに美しかったことでしょう。舞台上の彼は本当に美しく、男性なのか女性なのかわからないとユィとも話していたんですよ。是非2人の共演が見たいです』

ユィ『芸術に国境は無いという言葉に今まで実感が持てませんでしたが、早乙女さんの舞台を見て初めてそう感じました』