2009年1月6日(火)、『チェチェンへ アレクサンドラの旅』(アレクサンドル・ソクーロフ監督)を公開している渋谷・ユーロスペースにて、同映画の上映後、パレスチナに育ち、ジャーナリストとして活躍中の重信メイさんをゲストに招いてのトークショーが開催された。
会場には、元日本赤軍リーダー・重信房子の娘である重信メイさんを追いかけ、ドキュメンタリーを制作しているロンドンの製作会社のカメラクルーも入った。

トークゲスト:重信メイさん 司会:吉川正文 
@渋谷・ユーロスペース

—まず、映画の感想をお聞かせください。
◆この映画は戦闘シーンを描くことはしていないのですが、戦争というものは虐げている側にも、虐げられている側にも、両側にいつも被害者がいるということを強く感じました。

—戦争と女性という視点からは、どのようにお考えですか?
◆戦争において一番被害に合うのは、武器を持たない女性や弱者だと思っています。たとえば、旦那さんが殺された場合、旦那さんがいない中で家族を守ったり、子どもを育てたり、仕事をしたりして、プライドを持って子どもが大人になるまで育てていかなければなりません。戦争のときも平和なときもいつでも社会は女性が核になっていると感じています。

—ソクーロフの監督は、この映画について、「チェチェンに限らず、イラクであろうが、アフガニスタンであろうが、中東であろうが、どこでも共通している問題を描いている」と述べています。以前、重信さんに、チェチェンでの戦争が激しかった頃の様子を映像でご覧いただきました。そのときは非常に中東の様子に似ているとおっしゃっていましたが...。
◆ええ。まさに。今日もこういうイベントをする11日前に、ガザでも侵攻も始まって、先ほどまでガザの様子を見ていました。以前見せていただいたチェチェンの映像もそうですし、私が体験した戦争もそうでしたけれども、戦争の場面、イメージはどこでも同じなんだなと思いました。病院の中でのパニックも、破壊の姿も、泣いたり、叫んだりして、悲しむ人々の姿は、言語が違っても、戦争の理由が違っても、戦争がもたらす結果として同じだと思います。今回のガザの侵攻でも、既に530人超が民間人も含めて殺されていて、中でも一番多いのが若者たち、子どもたちです。たとえば、3人の子どもと妊娠中のお母さんであったり、今日も七人家族が殺されたり...、本当に子どもたちがどんどん殺されてしまうという状況にあります。また、破壊の姿というのもどこの戦争でも同じだと思います。多分、戦後の日本も。戦争というのは人間を破壊し、国全体をも破壊してしまうと感じさせられました。

—それでは最後に、レバノンに生まれ、中東で生活されてきて、現在は日本でジャーナリストとして活躍されてらっしゃいますが、ジャーナリストとして今、発信したいことは何ですか?
◆ジャーナリストとしてというよりも、一人の人として伝えます。今、日本でいろいろなニュースがメディアによって報道されています。その中で、人間の命が数字として伝えられてしまっていますが、そこには一人ひとりの家族がいて、一人ひとりの愛している人たちがいて、一人ひとりの空間があって、それが全部、破壊されてしまったということであるということを、私も戦争を経験した人として、理解していただきたいなと思います。また、もうひとつ、大手メディアの流す情報には限りがあります。ニュースソースはそれだけではありません。インターネットなどを利用して、自分で情報を探し、比較し、自分が知らなかったことがそこにあったなら、今度は自分が発信源となってどんどん発信してほしいと思います。