11月12日(水)、不朽の名作『アラビアのロレンス 完全版ニュープリントバージョン』12月下旬の一般公開(新宿テアトルタイムズスクエア)に先立ち、11/21〜24まで開催される第15回・大阪ヨーロッパ映画祭の名誉委員長としてモーリス・ジャール氏をお招きし、記者会見を行いました。

ジャール氏は20世紀の映画音楽史に偉大な功績を残してきた映画音楽界のゴッド!生きる伝説です。
今年なんと84歳にも関わらず笑顔で登場、名作の誕生秘話と自身の映画人生についてたっぷりと語っていただきました。本作の音楽ではアカデミー賞作曲賞を受賞!その後、『ドクトル・ジバコ』(1965)、『インドへの道』(1984)でアカデミー賞を計3回受賞、さらに9回ノミネートという記録を持ち、20世紀の映画音楽界に金字塔を打ち立て、映画音楽史を創ってきた人物です。

★モーリス・ジャール氏 ご挨拶
・この映画の音楽は40年前、アメリカのソニーのスタジオで録音しました。女性が一人も出てこない、アクションやカーレースもないエキサイトしない映画なのに、素晴らしい名作である。製作から40年以上経つのに色あせていない本作は、本当に素晴らしい。今回のニュープリント上映で観る観客の皆さん、今の若者も40年前の観客と同じぐらい楽しめる名作です。

・作曲を頼まれたとき、プロデューサーのサム・スピーゲルにロンドンに呼び出されて、編集前(ラフカット)の40時間におよぶ映像を1週間まるまるかけて観た。そして、リーン監督が本編を4時間ぐらいにするから、6週間で音楽をつけてくれと言われた。寝る間も惜しんで作らなければならず、眠るのが大好きだったから大変だった。5時間働いて20分寝るというスケジュールを6週間ひたすら繰り返して、きっちり完成させたよ。

・自分の曲だから、オーケストラの指揮もしたかったけれど、資金を出してくれていたイギリスとの関係でイギリス人指揮者、エイドリアン・ボールトが指揮をすることになった。でも、実際始めてみたら、スクリーンのそれぞれのシーンに合わせて1秒の狂いなく指揮をする、という映画音楽の常識に関してはわかっていなかた。本人ができないというから、結局自分でやった。エンドクレジットは彼の名前になっているけれど、実際の指揮者とは違うんだよ。

・私が必死で作ったロレンスの音楽へのいちばんの贈り物は、6週間で仕上げた直後、1962年の12月2日、英国女王のまえでの、王室プレミア試写のときでした。一番感動的で盛り上がるシーンで、低音から高音へと続く盛り上がりを演出する音楽をつけたんだが、観客がそのシーンで拍手してくれたことだ。自分の気持ちと音楽が、観客に通じて最高に嬉しかった!
そして、皆さんと今日ここでお会いできるのも、『アラビアのロレンス』のデヴィッド・リーン監督のおかげです。彼には、『ドクトル・ジバゴ』のテーマを5回も描き直しさせられたこともありました。結構うるさい男ですが、リーン監督という素晴らしい巨匠との出会いがあって今の自分がいます。彼と仕事をしたことはずっと忘れないし、彼のような素晴らしい監督と仕事ができて、自分はなんと祝福された幸せな人間なのだろうと思います。『アラビアのロレンス完全版』ニュープリントをぜひ皆さんに楽しんでもらいたいです。今回はじめて音声がデジタルにもなりました。音には人間のようにしわはありませんので、まるで昨日出来上がったようですよ!!

■質疑応答

—ジャール氏が作る音楽はロマンチックですが、ジャール氏のロマンティシズムは何でしょうか?
ジャール氏:I am Romantic!! ほかに何をいえとおっしゃるのですか!

—大阪ヨーロッパ映画祭で、ジャール氏のドキュメンタリー『モーリス・ジャールの軌跡』が上映されますが、ご覧になった感想は?
ジャール氏:いい歳になったので、ドキュメンタリーの話がきた。ゴシップ的なことは一切問わず、私の仕事への質問が、プロフェッショナルでとてもよかった。リーン監督、ヒッチコック監督、ピーター・ウィアーやフォルカー・シュレンドルフ監督について話をした。プレミア上映が大阪ヨーロッパ映画祭でされることに、お礼を言いたい。