直木賞作家・重松清のベストセラー小説を原作にした、大林宣彦監督の最新映画『その日のまえに』が1日初日を迎え、
大林監督をはじめ、主演の南原清隆、永作博美ら豪華キャスト11名が登壇した。
同作は、余命=その日を宣告された妻と、その夫が「その日」までを一生懸命生きる姿と、彼らを支える人びとの切なくけなげな様を描いた物語。

永作は、「楽に、自然に夫婦の体感をさせていただきました」と延べ、一方南原は、「自分のクランクアップより、とし子(永作)がクランクアップしたときの方が辛かった。2〜3日前から眠りが浅くなり、

動悸(どうき)も激しくなりました」と語り、大切な妻を看取る夫という難役を演じた心境を切々と語った。
「ひろべえ(永作)が10日早くクランクアップした後のナンチャン(南原)は見てられなかった」と、大林監督。
演技とはいえそんな深い夫婦愛を目の当たりにして、「撮影中ナンチャンはずっと良い夫で、僕は嫉妬のしっぱなしでしたよ(笑)」と、70歳の監督も永作に魅了された様子だった。

監督より、「その日」が来たら?という質問に対して、「受け入れるのは難しい。でも送る側でも、逝く側でも気丈でありたい」と答えた永作の、遠くを見据えたまっすぐな力強い目が印象的だった。

ここで永作は、多忙なスケジュールの関係で、皆より一足早く舞台挨拶を終え早退することに。
永作退場後も進行する舞台挨拶だが、今度は場内の照明トラブルにより突如停電に!
そんな想定外のハプニングに見舞われながらも、大林監督が「映画は、作られる・観られる・語られる、ことで初めて“映画”になります。この映画は沢山の人びとに愛されて作られました。ですから、皆さんにも愛していただくことが最高のご褒美になります」と同作に寄せる想いを熱く、静かに語ると、場内からは監督に対する尊敬を込めた惜しみない拍手が湧き起こった。

(Report:Inoue Midori)