第21回東京国際映画祭の受賞者記者会見が行われた。各賞を受賞した方々のQ&Aが行われた。
コンペティション部門で審査員特別賞を受賞した『アンナと過ごした4日間』。本作の監督を務めたイエジー・スコリモフスキ監督。
Q:受賞されたお気持ちはいかがでしょうか?
(イエジー監督):「受賞した気分(笑)。そして、少しお金持ちになった気分。」

Q:17年ぶりの作品おめでとうございます。次回の作品はどうしますか?
(イエジー監督):「明日にでも撮りたい気持ち。今回の『アンナと過ごした4日間』はそれほど満足した作品になった。」

Q:今回あなたが参加されたtiffの印象とは?
(イエジー監督):「少なくともカンヌでのレッドカーペットより、東京のグリーンカーペットのほうが良いと思った。そして、映画祭の規模の大きさにはびっくり。是非ともトップクラスに見合う映画祭なので、そうなってほしい。」

東京サクラグランプリ賞と監督賞の2冠を受賞した『トルパン』。セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督、アスハット・クランチレコフ(俳優)、サマル・エスリャーモヴァ(女優)が出席。
Q:「どのような経歴なのか教えてください。
(セルゲイ監督):現在46歳の1962年のカザフスタン生まれ。28年カザフスタンに住んでおり、それから航空学校を経て9年航空系の仕事をしていた。その後全くの偶然により、モスクワの映画学校の募集を知り、入学することになった。女優のサマルは、現在24歳のカザフスタン出身の女優。俳優のアスハットは、彼は本当はプロのアクターではなく、出会った時は、芸術大学に通う監督志望の学生だった。彼は、現在26歳。」

Q:表彰式の際、次回、予定作についてどのようにお考えですか?
(セルゲイ監督):「次回は、フィクション映画をとりたい。おそらく今後は「モスクワ」で撮る予定。撮影が終わった後、出来ればカザフスタンに戻りたい。なぜなら、子供時代という大切な時期をすごしてきた地だから。カザフスタンに住むロシア人のことを描きたい。なぜなら、自分がそうであるから。」

Q:今回の撮影はいかがだったのでしょうか?
(サマル):「私の住んでいた場所とは全く異なる地であった。この仕事にはいり、すぐに大変であることに気づいた。しかし、私にとって全く異なる地へ行く事は非常に興味深いことだった。今回私は初仕事であったが、異なる地へ行くということのは、とても大切なことであるのを感じた。」
(アスハット):「私にとって今回気がついたことは、監督を信じること。自分の命を託す位、信じれば命を預けることだって出来ると、そのくらい強く信じること。監督の望むところに向かうこと、それを信じることが、スクリーンに映るのだと思う。」

今回審査員賞と観客賞の2冠を制した前田哲監督の『ブタがいた教室』。
Q:今回賞の数では、根岸吉太郎監督を越えたいといっていましたが、いかがでしょうか?
(前田監督)「まだまだだと思う。先ほど、『ブタがいた教室』に出演していた子供たちが駆けつけてくれ、プレゼントをもらった。そのプレゼントに、「大きくはばたけ」とかいてあった(笑)。だからもっとはばたいていこうと思う。」

Q:どうしてこの映画では、「ブタ」を扱ったのでしょうか?
(前田監督)「鳥だとブタよりも簡単に飼うことが出来る。そして、愛らしく小さなかたまりが「命」のかたまりのように思えたから。何より、僕はブタが好きだったから。」

そして、TOYOTA Earth Grand Prixでグランプリでは、ホセ・アントニオ・キロス(監督)と、ロリス・オメデス(プロデューサー)による『フェデリコ親父とサクラの木』が受賞。
Q:この作品に込められた想いとは何でしょうか?
(ロリス)「我々人間は、緑を愛している。しかし、車や携帯電話など電気を日々使用している。そこには、矛盾が生じてくる。そして、どこかで妥協をしなくてはならないと思う。」
(ホセ監督)「人間には自然か文明の発展か選ばなければならないと思う。」

Q:受賞された感想をもう一度お願いします。
(ロリス)「私はとても嬉しい。私の1番の賞は、ここに作品が受け入れられたこと。後、もう1つは東京に来ることが出来たということ。さらに、一昨日に京都にもいけたということ(笑)。そして、この作品は11月7日からスペインで公開される。この作品には決して大きな俳優さんなど出ていないが、公開にプラスになると思う。」
(ホセ監督)「敬愛する黒澤監督や小津監督のうまれの日本に来ることが出来、非常に嬉しかった」

日本映画・ある視点部門の作品賞には、故;市川監督の『Buy a suit』。末永智也助監督と、本作に出演している砂原由紀子さんが参加した。
Q;受賞されたお気持ちはいかがでしょうか?
(末永助監督)「もし監督がこの場に居たら、非常に喜ばしいことだった。きっと監督がこの受賞をきいたら、とても驚いていたと思う。」
(砂原)「私は普段は女優をしていない。なので、こういう場は緊張する。スタッフの皆さんにはとても感謝している。」

Q:今後も女優を続けたいとお思いでしょうか?
(砂原)「それはないと思う。しかしもし、監督にお話を頂いたら、相談するつもり。」

Q:市川監督はこの映画にどのような思いがあったと思うでしょうか?
(末永助監督)「監督がお亡くなりになられ、机に映画の構想のメモがあったようで、「映画みたいなものを撮りたい」と残されていた。実験的な、映画もどきを作りたいといっていた。でも、本作は完全なるプライベートフィルム。「昔をもう1度思い出したい」と言っていたが、それは市川監督にとっての映画のリセットというものではないと思う。本来、市川監督の自分の撮りたい映画をとるという第1作品目となり、今後も毎年続ける予定であった。なので、この作品は市川監督にとっての最初で最後のプライベートフィルム。」

アジアの風、最優秀アジア映画賞では、フセイン・カラベイ監督の『私のマーロンとブランド』が受賞。
Q:賞を受賞された感想は?
(フセイン監督)「本当に驚いた。今回の映画祭では、受賞など気にせず、映画を見て、楽しみたいと思っていたので、びっくりした。」

Q:受賞したことで「トルコでも上映が出来る」と言っていたのは?
(フセイン監督)「どこの地域でもそうだと思うが、アメリカ映画があるので、公開となると、アメリカ映画とトルコ映画と折り合いをつけ上映されることになるので、競争率が非常に高くなる。今回受賞できたために、2週間後にはトルコで公開されることになった。本作はトルコではタブーを扱ったものであったが、このような国際的に認められている映画祭で得た賞によって、公開が可能となった。」

Q:東京国際映画祭期間中、何本の映画を見たのでしょうか?
(フセイン監督)「2本見ました。僕は今年、この『私のマーロンとブランド』の作品をひっさげて、8ヶ月間19個の映画祭に参加しました。その多くの映画祭で、かぶっていた作品なども見たので、沢山見ることが出来たかと思う。」

Q:受賞されたことでは、どのような結果をもたらすでしょうか?
(フセイン監督)「まず僕はクルド人であり、経済学を学んできた。そういった背景から、色々な困難に立ち向かったという自負がある。こういった人権問題というのは、ステレオタイプになりがちなので、それを両サイドから撮っていきたい。そういった映画作りの活動の中で警察に捕まったことがある。しかし、私の映画のもたらす結果から、周囲の人が認めてくれ、以前よりも映画を作りやすくなった。それは、映画人としてだけではなく、人として様々なことを乗り越え、強くなったと感じる。人権問題というのは憎しみを残していくのではなく、理解していかなくてはならないと思う。」

今回東京国際映画祭のコンペティション部門においての審査員長を務めたジョン・ボイド。
(ジョン)「この6人の審査員は、テーブルを支える6つの足だった。最初に賞を与えることに関してどのようにやっていこうと話し合った。その結果、6つの賞をうまく誰かが取るのではなく、自分が本当にこの作品がよいというものに賞を与えよう!ということにきまった。しかし、本当に審査することは大変だった。なぜならどの作品も素晴しいものばかりだったから。」と語った。又、今回の東京国際映画祭における「ACTION FOR EARTH」というフレーズや、「グリーンカーペット」に関し、大絶賛。
(ジョン)「僕は職業上、多くのカーペットを歩く。しかし、今まであんなに大きなカーペットを歩いたことなど一度もない(笑)」とはなし、「グレート、カーペット!」と何度も笑顔で叫んだ。こうして、第21回東京国際映画祭は幕を閉じた。

(Report:大倉真理子)