1972年10月、アンデス山脈の乱気流に巻き込まれ、飛行機が墜落した”アンデスの聖餐”事故を再現したドキュメンタリー映画『アライブ−生還者−』が東京国際映画祭にて初お披露目となった。特別ゲストとして、生存者の一人であるエドゥアルド・ストラウチ氏が登壇、観客の質問に答えながら、事故当時の様子を振り返った。

映画『生きてこそ』の題材にもなった事故だが、「映画『生きてこそ』は映画としてはおもしろいかもしれませんが、あくまでもハリウッド映画です。私達は生の声を言える場を求めていました。本作はウルグアイ出身のゴンサロ・アリホン監督から話をもらって実現した映画です。」と語る。一見、気さくな笑顔からは遭難経験は感じさせない。しかし、ティーチインを重ねるたびに壮絶な事故だったと再確認することになる。

週刊誌などに人肉を食べたところだけ特化され伝えられたこともあった。「友人の肉を食べたということばかりクローズアップされて風当たりも強かったです。幸いなことに30年たった今、我々の物語はそれだけではないということをわかってもらえていると思います。食べるという決断は私の人生の中でとても難しくてタフな決断でした。しかし、はっきりした意識の中で決断しました。その後も良心の呵責を一度も感じたことはありません。なぜなら私は食べなくては生きていけなかったからです。私は食べる前に湯人たちに“もし自分が死んだら食べてくれ”とも言いました。」

どんなに体力のある若者でも命を失っていった事故。生還できたのは奇跡なのだろうか。
「私自身、奇跡だとは思っていません。なぜ自分が生かされたのかと考える生存者も居ます。けれども私は自問自答しないようにしています。なぜなら答えはで見出せないからです。それよりも前向きに生きることに専念したいと思っています。」と語った。それは、強い人間にしかできない笑顔で語った。

(Report:Hiromi Kato)