第21回東京国際映画祭:『アンナと過ごした4日間』17年ぶりの映画制作について巨匠・イエジー・スコリモフスキ監督が語る
第21回東京国際映画祭 コンペティション部門『アンナと過ごした4日間』。
エキセントリックで奇異でありながらも、真にロマンティックな物語である『アンナと過ごした4日間』。監督のイエジー・スコリモフスキさんをお迎えして、ティーチインが行われました。
■ 日付 10月20日(月)
■ ティーチイン 21:49〜 (TOHOシネマズ六本木ヒルズScreen 7)
■ 登壇者 イエジー・スコリモフスキ(監督)
質問:映画制作はずいぶん久しぶりのようですが──。
監督: 映画をつくるのは、17年ぶりのことです。当時は、可もなく不可もないような映画しかつくることができませんでした。ですから、一流の映画がつくれるまで、活動を休止しようと決意しました。その間は、私が映画の次に情熱を注いでいる絵画制作に取り組んでいました。それまでプロとして絵を書く機会がなかったので、充実した日々でした。
質問:映画を観て大変感動しました。特に、音響効果が素晴らしかったと思います。
監督:映画には、絵作りだけでなく、音作りも大切です。それほど難しい仕事ではないと思っています。
質問:台詞が少ない映画ですから、尚更役者の動きや表情が重要になってくるのだと思います。レオンがアンナの部屋に入ってくるシーンですが、具体的な演出をされたのでしょうか?
監督:演技について役者に説明するのが監督の仕事です。インプロビゼーションがあったかどうかということですが、特にあのシーンについては、カメラや役者の動きやポーズに至るまで、細かく指示を出しました。多少のアドリブがあったシーンもなかったわけではないですけどね。
質問:アルトゥール・ステランコさんとキンガ・プレイスさんをキャスティングした経緯について教えてください。
監督:アンナ役については、ポーランドで一番の女優を選びました。レオン役についてですが、年齢設定をしていなかったということもあり、様々な年齢層の役150名の役者から探し出すことになりました。23歳で個性的な俳優と、私に色々と提案までしてくれる37歳の演出家兼役者、この二人が残りました。ただ、もう少し探してみるべきだという気がして、決断できませんでした。ある日ポーランド北部の劇団で、こっそりと部屋に入ってくるアルトゥールを見かけました。瞬時に、彼こそがレオンだと思いました。
質問:レオンは知覚障害として描かれていますが──。
監督:レオンは、観客が優越感を覚えるほど単純な男ですが、彼のアンナに対する愛情が、彼を特別な存在にしていきます。彼の感情を、台詞を使わずにボディランゲージで表現したいと考えました。演出効果のために、彼のブーツに片足3キロ程のウェイトをつけて、わざと歩きづらくしました。
質問:ポーランドとフランスの共同制作とありますが、ポーランドで撮影し、ポーランド語にしようと決めた理由は?
監督:共同制作ではありますが、ポーランド側の力が強かったこともあり、そのようになりました。ポーランドには、映画制作をサポートしてくれる政府機関があります。幸いなことに、かなりの予算を持っており、ポーランドで制作された映画の約95%は、この機関の後援を得ています。『アンナと過ごした4日間』の場合も予算の半分は、ここから出ています。もちろんプロデューサーのパウロ・ブランコも少しは貢献してくれましたけどね!(笑)。撮影はすべてポーランド北部で行い、撮影後の編集はパリで行いました。