■ 日付 10月20日(月)
■ 記者会見 13:30〜 (ムービーカフェ)
■ 登壇者 セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ(監督)、アスハット・クチンチレコフ(俳優)、サマル・エスリャーモヴァ(女優)

映画を通して、世界の純真さや温かみを、自然かつ詩的に示すことを目指しているドヴォルツェヴォイ監督と、主演のアスハット・クチンチレコフさんとその妹役を演じたサマル・エスリャーモヴァさんをお迎えして、記者会見が行われました。

質問: 日本、東京の印象について

ドヴォルツェヴォイ監督: 8年前に山形国際ドキュメンタリー映画祭以来の来日です。東京であるということもあり、前回とは大分違った印象を受けています。芸術家・映画監督にとって、他の国を訪れることは、自国の文化や生活を見直すきっかけになるのだと思います。

サマル・エスリャーモヴァさん: 東京は特別な街で、他とは違うと感じています。人々による自国への愛を感じます。

アスハット・クチンチレコフさん: 黒澤明監督の「羅生門」が日本に興味を持つきっかけでした。とりわけ安部公房、芥川龍之介、村上春樹の文学作品が好きで、彼らはロシア文学でいうならば、私の中ではドストエフスキーやチェーホフやトルストイに匹敵する作家です。それから日本の女性にも興味がありますよ!

質問: 初の長編監督作にこの題材を選んだ理由についてお聞かせください。

監督: 私はカザクスタン生まれです。ウクライナで航空工学を修めた後、航空会社の無線技師をしていましたが、空から見た農村の風景をいつかフィルムに収めたいと思うようになりました。また以前に、耳が大きすぎて結婚できない男がいたという話を聞きました。実話だそうです。その話をヒントにしました。

質問: 映画が完成するまでに4年かかったと伺っていますが──。

監督: そうですね。準備期間から完成まで4年かかりました。クランクインの1ヶ月半程前から、キャストには実際にテントでの遊牧生活を体験してもらいました。撮影期間を通して、結局シナリオは当初のものから80%くらい書き換えることになりました。自殺のシーンを初めとする難しいシーンについては、俳優とも話し合いながらつくっていきました。

質問: 遊牧民生活はいかがでしたか?

サマルさん: 私は都会に生まれ育ち、田舎暮らしをしたことがありませんでした。初めての遊牧民の移動式テントでの生活も苦労の連続でしたが、私の人生の中で最も興味深い体験のひとつとなりました。

質問: アスハットさんは、元々は歌手でいらしたそうですが、過酷な撮影に誘われたことについて、どう思われましたか?

アスハットさん: 「人生には3回運命を変える機会が訪れる」ということわざがあります。今回の映画は、私の運命を変えるひとつの出来事であり、また人生経験そのものであり、精神的な面でも人間として大きく成長できたと思います。

質問: 羊の出産のシーンをクライマックスに持ってきた意図は?

監督: 元々脚本では、単純に羊が生まれたというシーンだったのですが、実際に撮ってみて、力強く美しいシーンであったので、それを生かすために脚本を書き換えました。

質問: お二人をキャスティングした決め手は?

監督: カザクスタン中を小さなカメラを持って、プロとしての経験より、心を開いて映画を受け入れてくれる人、また、個性のある人を求め千人ほどから二人を選びました。

質問:5カ国の共同制作となっていますが、実際はカザクスタンとロシアですね。他の国はどのように参加したのですか?

監督: プロデューサーがドイツ人、カメラはポーランド人、音声はスイスのスタッフと、各国スタッフの協力で制作しました。

質問: ボニーMの曲を使った理由は?

監督: カザクスタンやロシアでも人気があり、この作品の雰囲気にあっているので。私が気に入っていることも大きな理由ですけどね!