第21回東京国際映画祭コンペティション部門「がんばればいいこともある」は、娘の結婚式の日に起きたトラブルに勇敢に立ち向かう母親を描いた感動作。その肝っ玉母さんを演じた、実はとってもエレガントなフェリシテ・ウワシーさんを お迎えして、舞台挨拶と記者会見が行われました。

■ 日付 10月19日(日)
■ 舞台挨拶 17:03〜 (TOHOシネマズ六本木ヒルズ Screen 7)
■ 記者会見 17:45〜 (ムービーカフェ)
■ 登壇者 フェリシテ・ウワシー(女優)

フェリシテ・ウワシーさん(FW): 東京の皆さん、こんにちは! アジアの国を訪れるのは今回が初めてで感動しています。また、とても親切に接していただいて感謝しております。女優としての最大の喜びは、今日のように映画館がいっぱいになることです。

質問: 日本の印象は?
FW: まだほとんど東京国際映画祭の会場しか見ていませんので、何とも言えませんが、映画館は素晴らしいですね。実は私の兄弟が日本人の女性と結婚して京都に住んでいます。今回は尋ねることができませんが、日本は私の祖国であるカメルーンからも思っていたほど遠くないことがわかったので、またゆっくりと遊びに来たいと思っています。

質問: フランソワ・デュペイロンとの出会いについて、そしてこの映画に出演することになった経緯について教えてください。
FW: 私が出演していたロマン・ポランスキー監督の「Doute」という芝居を見たデュペイロン監督から、映画を撮る予定だが出演しないか、というお誘いがありました。さっそくその晩シナリオをいただきましたが、おなかをかかえて笑うほどおかしくて、読み終わるともう夜中の2時になっていました。すぐに監督に電話をし、「これって差別的表現にあたらないの?本当にこのまま撮るの?」と質問すると、「その予定だ」と。私はその場で出演に応じることにしました。

質問: 演じがいのある映画になっていると思いますが、自分のために書かれたシナリオだとお感じになりましたか?
FW: 本当に私のために書かれたものなのかどうかはわかりませんが、この役をいただけて本当に嬉しかったです。役どころにどっぶりと浸かることができました。デュペイロン監督は私の好きな監督ですし、撮影監督のイヴ・アンジェロのカメラづかいも素晴らしく、カメラがまるで私たちと一緒に演技をしている俳優のように感じがしました。だから映画をつくっているという感じがしなかったです。
私が演じたソニアは、とてもシンプルな人なので、役作りの中で一番力を注いだのは、シンプルにするという点です。あらゆる母親が共感できる人物になるように考えました。当初シナリオの中でソニアはとても優しい人物として描かれていたのですが、こんなに優しくては人間らしくないと監督に訴えました。特にこどもや自分の利益を守る立場になった時、女性にも少し暴力的になると考えています。ですから、男の人を乾燥機から引っ張り出すなどといったシーンを入れてみたりしました。

質問: 映画の舞台はパリの郊外と聞いていますが、私たちがフランスやパリについて持つイメージとは違うのですが…
FW: マチュー・カソヴィッツが監督した『憎しみ』という映画をご覧になっているかしら。パリの郊外というのは、非常に特別な場所で、昔は労働者階級が暮らす場所です。ルノーなどのような企業が工場を建設し、住宅をつくり、そこに移民労働者を住まわせていました。そこで世代が重ねられて行くにつれて、とても閉じられた社会が形成されました。今は工場ななくなってしまいましたが、移民社会はそのまま残り、実際に映画に描かれたような町は存在しています。
ただ監督が言っていたのは、これはパリの郊外を描く映画ではなく、パリの郊外に住んでいるような平均的な家族についての映画であるということです。社会や家族に見捨てられている白人の老人が大勢います。そしてその人たちを唯一世話しているのは、若い北アフリカ系の移民の人達だという現状に衝撃を受けたそうです。ソニアとロベールのように、全く関係のないような人たちが出会って、心を分かち合うようになる、そういった人間関係を描いた映画です。

質問: 映画の中とは全く違った雰囲気ですが・・・
FW: ソニアとして6カ月過ごしましたが、撮影の最後の日にソニアとサヨナラするという意味を込めてスキンヘッドにしました。すぐに伸びるでしょうし、でも、つるっとした頭をなでるのも気持ちいいものですよ!