2008年5月に開催されたカンヌ国際映画祭。世界中の映画関係者たちが注目した日本映画の企画、それが『感染列島』。新型ウイルスの感染拡大が実際の社会や人々にどのような影響を与えるか。本作は現代を生きるすべての人々に問題提起し、警告を鳴らす衝撃作だ。

10月2日(木)、帝国ホテルにて映画『感染列島』の製作報告会見が行われた。しかし、本作の会見は通常のものとは異なり、“ウイルス感染”に備えるためにマスコミ全員が防護服を着用し、無菌室に見立てられた会場の中、キャストたちも劇中衣装を身にまとって登場するという演出が施された。

まさに『感染列島』一色に染まる中、平野プロデューサーはこの映画の企画が立ち上がった時のこと、カンヌで海外の配給会社からオファーが殺到したことについてこう話した。
「10年ほど前にこの企画が立ち上がりました。最初はエボラやHIVなどで何かできないかと考えていたんですが、SARSが出てきたとき(ニュースで)防護服で殺菌している人たちの姿を見て、まるで人間とウイルスの戦争だなと感じ、そこから新型のウイルスが日本を襲ったらどうなるか……をベースに考え始めました。カンヌでは“今ここにある危機”ということで、新型のウイルスを題材にした本作にとても興味を持っているようでした。ウイルスに対しての関心は日本より海外のほうが高いようです」
また、本作は早くもハリウッドリメイクの話が飛び出しているそう。

「皆さんの防護服姿を見て、今年の3月に新潟で撮影したのを思い出していました」と語るのは、一人でも多くの患者を救おうと奮闘する主人公の救急センターの医師<松岡剛>役を演じた主演の妻夫木聡。「このお話をいただいたとき、最近あまり見かけない“オリジナル”の部分にとても惹かれました。この映画では感染症をテーマに描いていますが、何が起こるかわからない今、これは他人事ではないような気がします。その中で僕もどう生きていくかを考えさせられました」とコメント。

そんな妻夫木を瀬々敬久監督は、「彼はいつも座長のようにみんなを引っ張ってくれました。チームの勝利を考えている4番バッターのようでしたよ」と表現し、主人公をサポートする、WHOメディカルオフィシャーという難役に挑戦した檀れいについても、「檀さんは“私はそんなに器用な役者じゃない”と言っていたけど、体当たりでぶつかってくれ、そのエモーションはすばらしいと思いました」と褒め称えた。

初共演となった妻夫木と檀は「檀さんはこのままの方です(笑)。檀さんが演じた<栄子>は女性ならではの強さと弱さを持ち合わせています。その両方をとても上手に演じられた檀さんとご一緒していて僕も気持ちがよかった。(相手役が)檀さんでよかったです」(妻夫木)、「相手あっての自分の演技だと思っていますので、妻夫木さんが大きく受け止めてくれたからこそ、私は妻夫木さんの懐の中で一生懸命演じることができました。ありがとうございます」(檀)と、互いを尊重しあった。

他にも国仲涼子、ダンテ・カーヴァー、藤竜也など豪華な面々が脇を固めている。その中でもウイルス研究の第一人者<仁志>役の藤が撮影中のエピソードとして「私は食べることが大好きで、フィリピンロケでもたくさん食べて周りに心配されましたが、ウイルス学者がそんな心配していたらダメだからねぇ。ダンテはそういう意味では食に臆病で、“僕はフルーツだけで十分!”と言って部屋で食べていましたね」と笑いながら明かすと、「色々な食べ物にも挑戦してみたんですけど、僕は皆さんと一緒にいる時間が一番楽しかったです」とテレながら答えた。そんなダンテはソフトバンクのCMキャラクターでご一緒した犬のお父さんから「お兄ちゃん、がんばって!」と言われたそうで、これには周囲からどっと笑いが起こった。

また本作『感染列島』では、日本から感染症による健康被害を最小限に減らすため、「感染ゼロキャンペーン」も推進していくこととなった。
妻夫木は「僕は18歳のときに“はしか”にかかって2週間くらい隔離されて入院していたことがあるんです。本当にきつかったですね。感染症の恐ろしさを身に染みて感じたので、こういう取り組みはうれしく思います」と自身の体験を織り交ぜつつ語った。

<撮影スケジュール>
2008年3月 クランクイン
2008年5月 クランクアップ
2008年10月現在 本編はほぼ完成、残すはエンドクレジットを付けるのみ(?)

(Report:Naomi Kanno)