9月20日、期待の新鋭池田千尋監督が、初の長編映画を掲げベテランキャストと共に公開初日を迎えた。
27歳という若さで長編映画デビューを果たした池田監督は、学生時代の修了制作作品『人コロシの穴』でカンヌ国際映画祭・シネフォンダシオン部門にノミネートされるという実績をもち、その後05年東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻監督領域に一期生として入学。
今『トウキョウソナタ』で話題の黒沢清監督に師事し、同監督も絶賛する若手監督期待の星だ。

この度初日を迎え、「本当に嬉しいです。素晴らしいキャスト、スタッフに恵まれ、沢山助けていただきました。観終わった後に、観た方の日常にこの映画が帰っていけたら嬉しく思います。」と、やや緊張した面持ちで語った池田監督。
主演の一人、西島秀俊が「一人一人の役者に控え室があったわけではなかったので、みんなが一つの部屋で一緒に食事をし、台本を読み、わいわい楽しい現場でした。とても幸せでしたね。」と感想を述べると、待ちに待ったと言わんばかりにうちわを持った西島ファンの観客が黄色い声援を惜しみなく送り、
本人はというと笑ってファンに応えながらも、恥ずかしそうであった。
西島が演じる役の職場の後輩を演じた加瀬亮も、「幸せな現場でした。あんな風に映画というものに純粋に向かい合えたのは久しぶり。ゆっくりとした変な(?)時間が流れていますが、楽しんでください。」
と観客に語った。
また、今回の撮影にあたり、「立ち位置とか決まらないところからのスタートだったので、自由に演じることが面白くもあり、逆にすごく大変でした。そういった撮影スタイルは他にあまり無いと思いますね。」と新人監督の大胆な撮影手法に驚いたエピソードを明かした。

社会に居場所を無くし、真剣に生きることから目を背けようとする若者が悠々と時を経た人生の先輩達と出会い、心を揺さぶられながら日々変わっていく様子を緩やかに流れるように描く本作。
本作を観た誰しもが、観終わった後胸に響く何かを感じ取ることができるだろう。

(Report:Inoue Midori)