2006年の第134回直木賞を受賞したミステリー界の巨匠・東野圭吾原作の同名小説の映画化作品『容疑者Xの献身』が、ついに完成した。映画では、平均視聴率21.9%を記録したTVドラマ「ガリレオ」では描かれなかった天才物理学者・湯川学の苦悩と葛藤を、重厚な人間ドラマとして描き出している。

22日に行われた完成会見では、映画初主演となる福山雅治とTVドラマでも相性の良さを見せつけた柴咲コウ、本作で湯川と対決する天才数学者・石神役の堤真一、容疑者と疑われてしまう花岡靖子役の松雪泰子、映画は06年公開の『県庁の星』に続き2作目となる西谷弘監督が登壇。

「『ガリレオ』シリーズは1年以上に渡るプロジェクトだったので、湯川が自分の体の中に入ってきたようでした。映画が完成して感無量。“やっと(この日が)きたか!”という感じです」と福山の第一声に続き、柴咲は「ドラマ『ガリレオ』に関わっている最中に映画化の話を聞いたんですが、正直ショックでした。今、ドラマから、あるいは人気漫画から派生して映画化するケースが増えているので、“(ガリレオも)そういう風になっちゃうんだ”と」と意外な返答。だが、そのコメントには続きがあるようで、「でも、いざ現場に入ってみるとドラマとは全く違った雰囲気で、実際に完成した作品を観てみても原作を忠実に描いていてとてもよい作品に仕上がっているなと思ったんです」と笑みをこぼした。

その柴咲のコメントには監督も大きく頷き、「確かにヒットドラマや人気漫画が映画化へ・・・という図式はありますよね。でも、僕はやるからには1つの独立した作品にしたかった。ガリレオファンはもちろん、本作は原作ファンも大切にしようという想いで作りました」と自信満々に語った。

今回が「ガリレオ」初参加となる堤と松雪は、「“この映画に参加できて幸せだった”そう思える仕上がりでした」(堤)、「私は原作がすごく大好きだったので、参加できてうれしかったです」(松雪)と答えた。

天才物理学者VS天才数学者ということで本作が初共演となった福山と堤だが、息はぴったりのようで「対決というより男同士の友情が描かれています。認め合っている者同士という。彼(福山さん)のラジオはよく車を運転しながら聞いていたので、年齢もけっこう近いし身近に感じていたんですよ。お互い天才同士!みたいな(笑)。現場では僕、基本的にムダ話しかしないので、この撮影時も福山さんの役作りの邪魔になるんじゃないか?というくらいムダ話ばかりしていたような気がします」と堤が笑うと、「最初は邪魔だと思いました。“この人、俺をつぶそうとしてる……”と。でも関西の普通のおっさんというか、馴れ馴れしいだけだとわかりました(苦笑)」と言い返し、マスコミ陣を大いに沸かせた。

また、本作で初めて容疑者役を演じたという松雪は「ヘビーでしたね。恐怖の感情に追い込まれてしまって、最終的には人を殺してバスルームでバラバラにするという夢まで見たんです。堤さんもちゃんと登場しましたよ」と内容とは相反する穏やかな表情で語ると、それを聞いた堤は驚き呆れた顔で「ちょっと頭が・・・」と頭のところで指をくるくるさせるジェスチャーをし、またもや周囲の笑いを誘った。

その後、映画のタイトル『容疑者Xの献身』にちなんで「最近、献身的にしたことは?」という質問が飛び出すと、キャストたちはそれぞれ「この作品に献身したんじゃないかな? 時間もかかったし、やっぱりずっと集中していたから気持ちの部分が大きいですかね」(福山)、「撮影中に男性キャストたちのちょっと卑猥な話に献身的に付き合いました。男社会で揉まれるってこういうことかと実感しました」(柴咲)、「雪山のシーンです。人間が飛ばされるくらいのものすごい吹雪で、“自分のために”穴を掘って隠れました。献身的に(笑)」(堤)、「ラストの靖子と石神さんのシーンが大好きなので、そのシーンに向けて全てのシーンを献身的に演じました」(松雪)と、コメントした。

そして、主演・福山が撮影を振り返っての今の率直な気持ちをこう語った。
「撮影中は夢中だった分だけビビらずに済んだけど、今振り返ると大変だったなぁと思いますね。僕以外の皆さんは映画の経験が多数あるのに、僕だけ経験なしで現場に来てしまったと思った時は、正直かなりプレッシャーを感じました。でも僕は来年で40歳なんですが、こういう仕事をこんなに長く続けられるなんて思っていなかったので、プレッシャーを感じられる仕事ができるって実は幸せなんじゃないかと考えるようになったんです。なので、このプレッシャーを楽しみながら、まぁ、実際は楽しむ余裕はありませんでしたが、気持ちを切り替えてやっていましたね」

最後に今後の映画出演の予定を聞かれた福山は、堤に促されて「フジTV、東宝の映画などを中心にやっていけたらと思います!」とジョーク交じりに答え、照れ笑いを浮かべていた。

(Report:Naomi Kanno)