成功をつかめなかった男が手にした、かけがえのない幸福感。人生にとって本当に大切なものをみつけた夫婦愛の物語−。

先日開催されたヴェネチア国際映画祭でも非常に高い評価を受けた北野武監督の最新作『アキレスと亀』が、本日9月21日(土)に公開初日を迎え、監督、そして主演を務めた北野武、そして北野演じる夫・真知寿を支える妻・幸子を演じた樋口可南子が、テアトル新宿にて行われた初日舞台挨拶に登壇した。

まず、初日を迎えての感想を聞かれた北野監督。「何か昨日から台風がきていると聞いていて、今日直撃したらまた事務所が傾くという‥(笑)、そんな心配もあったんですが、おかげ様で晴れて、お客さんも入って頂いて本当にありがとうございます」と無事初日を迎えられた喜びを語った。
そして「試写会なんかで、映画が入らないとか事務所が傾いたなんて冗談で言ったらマスコミが本気にして書きやがってね、いまの話題はもっぱらリーマンブラザーズかうちの事務所という感じで(笑)。いやでも本当に冗談で言ったんですけどね、うちの事務所が銀行から取引停止を言い渡されたりとかね、ビルのオーナーが早く前家賃くれなんて言ってきたりね、本当に事務所が怒り心頭という感じなんですけどね、おかげ様でどうにかお客さんもこんなに入ってくれて、まぁ政府の手も入るという事なんでね(笑)、本当にありがとうございます」と語り、冒頭から会場を爆笑の渦に包んだ。

そして本作では、ヴェネチア国際映画祭や他の多くの取材を受け、とても忙しく動き回っていたという樋口さん。「そうですね、本当に映画を撮り終わってからのほうがすごく長く感じたんですけど、ヴェネチア国際映画祭でもすごくいい評価を頂いて、監督と一緒に長い長い旅をして、監督の楽しい話も毎回横で聞いていて(笑)、本当に楽しい時間を過ごせました」と笑顔で語った。
本作ではうさぎの着ぐるみ姿を披露した樋口さん。「あれは台本の段階ではすごく楽しみだったんですけど、台本にない所で突然着る事になったので、何かこう頭の中が混乱しながらも言われるままにやりました(笑)。でもおもしろかったです、いい経験になりました」と撮影時を振り返った。

そして本作のラストシーンではCGじゃないかと言われるほどの奇跡のシーンが撮れたそうで「本当に本番一回でやったんだけど、うまい具合にいってね、うちの映画が入ってないもんだから、うちのプロデューサーなんて“映画の神様が降りてきた‥!!”なんて涙ぐんじゃってね、みんなも大喜びしてそれだけで3日ぐらい酒飲んでましたよ」と話題のシーンのエピソードを語り、再び会場を笑いに誘った。

舞台挨拶中、終始監督のエピソードには会場から大きな笑いが沸き起こり、そんな暴走(?)気味の監督と、その姿を微笑ましく見つめる樋口さんの様子は、まさに映画の倉持夫婦そのもの。

そして今回、本作で北野監督演じる真知寿の青年時代を演じるのは、『3−4x10月』(90)での主演以来18年ぶりの北野作品のメインキャストとなる柳憂怜さん。同じく樋口さん演じる幸子の若き頃を、『夕凪の町 桜の国』(70)で多数の主演女優賞を獲得し、映画女優としてますます輝く麻生久美子さんが演じる。

そして更に、11月14日(金)よりギリシアにて開催される【テサロニキ映画祭】において、北野監督が名誉賞【ゴールデン・アレクサンダー賞】を受賞する事となり、現地での『アキレスと亀』の上映、そして北野監督の授賞式がとり行われる予定だ。

今後もますます話題となるであろう本作『アキレスと亀』は、9月20日(土)よりテアトル新宿、銀座テアトルシネマ、渋谷シネアミューズにてロードショー。

(Report:Nozomi SAWAI)