目の見えない美少女と奉公人の愛、そして彼女の美貌を永遠のものにするために彼が選んだ究極の選択‥、谷崎潤一郎作品の金字塔として今なお人々を虜にする珠玉の名作『春琴抄』。今回、山口百恵、三浦友和以来32年ぶりのリメイクとなる本作。9月27日(土)の公開に先駆け9月13日(土)、主演の斉藤工をはじめ、長澤奈央、松田悟志、沢木ルカ、金田敬監督が、科学技術館サイエンスホールにて行われた完成披露試写・舞台挨拶に登壇した。

本作では、長澤演じる春琴の奉公人、佐助役を演じた斉藤工。
まず会場に集まった観客を前に「3連休の初日に、この場に来て頂いて本当に嬉しいです。ありがとうございます!本当に短期の撮影期間の中、スタッフキャスト一丸となって集中して撮影に取り組んだ事が、こうやって形になってすごく嬉しいです」と喜びを語った。
そして本作では盲目の女性、春琴を演じた長澤奈央。撮影中苦労した点について「盲目の役は初めてだったので最初はとても大変だったんですが、ずっと目を瞑っているとやはり物や人にすごく敏感になるんです。なので最後の方はそれが当たり前の様になっていって、自然に演じる事が出来たと思います」と語り、更に「あと、私は東京出身なんですけど、やっぱり方言の壁がとても大きくて、現場のスタッフの方達もほとんど関西の方達だったりして、松田さんにも“ちゃうで〜、アカン!”と言われながらやってたんですけど(笑)、でも現場の皆さんが本当に愛情のある温かい人達ばかりで、支えてもらいながら何とか無事に撮影を終える事が出来ました」とのエピソードを明かした。
そんな長澤に浪花弁をレクチャーしたという、本作では春琴を誘惑する利太郎役を演じた松田悟志は「現場の空気がひとつになっていて、本当に雰囲気が良かったですね。僕が現場に入った時は佐助と春琴のどっしりとして落ち着いた世界が出来上がっていたので、そんな所に利太郎登場‥みたいな(笑)。非常に気持ちが引き締まりました」と語った。

そしてMCから監督の印象を聞かれた沢木ルカ。「最初は恐そうだったけど、演技を教えてもらううちに優しくなっていって、最後には本当に優しい人だなと思いました」とにこやかに語った。
その言葉に「そうですか、ありがとう‥(笑)」と思わず照れ笑いを浮かべた金田監督。本作は今回で6回目の映画化という事で「そうですね、今までの『春琴抄』は大規模な予算で、俗に大スターと呼ばれる方達が演じてこられましたけど、まぁ今回は非常にタイトな予算で(笑)、そして若手を集めてと‥、本来なら完全に負けから入っている様な感じなんですけど、でもそれを逆手にとって、我々にしか出来ない、斉藤と長澤にしか出来ない『春琴抄』を創ろうと思って撮りました。そして今回この映画を創るにあたって、嬉しいエピソードがひとつありまして。今回、長澤が春琴を演じるにあたって、山口百恵さんに手紙を書きましたという話を聞いたんです。山口さんにちゃんと届くかどうかは分からないけど、今の心境や想いを彼女なりに精一杯綴ったそうで、それを聞いた時に、あぁすごくいい話だなと思って‥、これはしっかりと襟を正してやらなきゃいけないなと、そういった気持ちで撮影に挑む事が出来ました」と思い入れのあるエピソードを明かしてくれた。

そして舞台挨拶の最後には、会場に詰め掛けた観客お待ちかねの抽選会がスタート。
出演者のサイン入りポスターが見事当選した観客1人1人にプレゼントされ、会場は大いに盛り上がりをみせた。

最後に、「普遍的なテーマがあるからこそ、今もこうやって受け継がれている作品なので、やはり今だけでなく、この先もずっと皆さんの心の中に残っていく作品になればいいなと思います」(斉藤)「原作を読んでいる方にも、今までの『春琴抄』をご覧になっている方にも、新しい金田組の『春琴抄』を受け入れて頂いて、色んなものを感じ取ってもらえたらいいなと思います」(長澤)「このご時世にこんなに静かな映画は珍しいと思います。ガヤガヤしてないと寝てしまう!という人も、頑張って観て頂ければと思います(笑)」(松田)「斉藤演じる佐助、長澤演じる春琴の、静かな時の流れを観てほしいです。佐助と春琴を演じるにあたって三味線や琴の練習もすごく頑張ってくれましたし、今回の出演者の皆さんとは初めての仕事だったんですけど、みんなとても気持ちのいい役者さんばかりなので、楽しんで観て頂ければいいなと思います」(金田監督)とそれぞれメッセージを贈り、舞台挨拶は幕を閉じた。

(Report:Nozomi SAWAI)