9月13日に公開を控えた映画『おくりびと』が、第32回モントリオール世界映画祭(2008年8月21日〜9月1日まで開催)でグランプリ(world competition部門“grand prix des Americas”)を受賞。北米において最も歴史がある映画祭のひとつであり、国際映画製作者連盟(FIAPF)から認定を受けている映画祭の中で、北米唯一のコンペ部門を有するモントリオール映画祭での栄誉。今回、映画『おくりびと』の主演を務めた本木雅弘、脚本家の小山薫堂を迎え、9月3日(水)電通ホールにて今作品の受賞会見が行われた。

【本木雅弘】
「本日は皆さんどうもありがとうございます。まずは作品を評価して下さったモントリオールの関係者の皆様に、遠く空を超えて感謝の気持ちを伝えたいです。そしてやはり滝田監督の弾んだ声と笑顔が、まず何よりです。映画は特に総合力の賜物なので、この映画に携わった全ての方達の力が寄り集まって、こういった結果に結び付いたのではないかと思います。」と挨拶。受賞の知らせが入ったのは会見の前日だったようで、「まだ自分自身あまり実感がなく、驚きながらも喜びを感じております。昨日の仕事中に受賞の知らせを聞いたんですが、それからマネージャー、スタッフの携帯がたくさんのお祝いのメッセージで鳴りやまないほどでして、1日をかけて喜びがどんどんと増幅していったという感じです。とにかく本当にハッピーです。」と受賞の喜びを語った。そして「私事ではございますが、この映画を共に企画し、映画への道筋を作ってくれた、私のマネージャーでもあり事務所の社長でもあった小口健二さんが去年の末にお亡くなりなって、実はこの映画が小口さんとの最後の仕事だったんです。そういった意味でも、小口さんの墓前に最高にいい知らせを届ける事が出来たと思い、非常に嬉しく思っています。」と本作に対する特別な思いを明かした。

【脚本家 小山薫堂】
「例えて言うなら、大事に大事に育ててきた娘を滝田監督の元に嫁に出したら、篤姫になって帰ってきちゃったという感じで(笑)、驚きと喜びでいっぱいです。僕が描きたかったのは、納棺師の物語もそうなんですがそれにまつわるさまざまな愛だとか、そしてやはり仕事に対する男の生きざま、プライド、そういったものを描きたいと思っていました。ですから今作品は特に、日本中の政治家と呼ばれる職業に就いている方達に是非観て頂きたいです。本木さんの演技を通して、“男が働く”という事の意味を改めて感じて頂きたいと思います。もし、福田さん(元首相)がこの映画を観ていれば、辞めなかったんじゃないかなと思います(笑)」と報道陣の笑いを誘いながらも、本作に懸ける熱い思いを語った。

滝田監督の印象については「やはりキャリアも含め現場を統括する力の大きさをひしひしと感じました。滝田さんが持っている包容力によって、非常に余裕を持って作品に挑めたという点ではすごく感謝しています。」(本木) そして今作品で納棺師という職業を描くにあたり何度も取材を行ったという小山は「火葬場のボタンを押すおじいさんが“死というのは、誰もが通過する門のようなものです”とおっしゃった言葉にはすごく心動かされましたね。そして納棺師の方に、“死とは何ですか?”という質問をしたら“究極の平等です”という言葉が返ってきました。その一言で、何かが開けたなという感じはありました。」と振り返った。

最後に、今回の受賞に関して御家族の反応は?という質問が飛ぶと「別件で電話をしたんですけれども、開口一番に子供達が“おめでとう!”と声をかけてくれました。」と笑顔で語った。そしてなんと、義父である内田裕也からは前日にFAXが届いたそうで、“本木おめでとう!俺はトロントを狙う!”と洒落た祝福のメッセージが贈られ、更には義母である樹木希林からも“とにかく‥、なんでも1つや2つ付くといいわね〜!!”という喜びの声が届いたと語った。この言葉には報道陣からも笑いが沸き起こり、会場には一気に祝福ムードが漂った。いよいよ9月13日から公開となる映画『おくりびと』。公開に先駆け非常にいいスタートを切ったようだ。

【滝田洋二郎監督からのコメント】
「この度、モントリオール映画祭でグランプリを受賞したという事で非常に嬉しく思っています。この映画は、死を巡る映画なのですが、僕は納棺師という職業を知りませんでした。取材を重ね、納棺の世界に引きずり込まれるうちに、僕自身、どう生きていけばいいのか、そしてどう死んでいけばいいのかを考えされられ、また、考えないようにしながらこの映画を撮りました。なんといっても本木さんの映画へのこだわり、チェロや納棺の所作、役へのアプローチの仕方には感動しましたし、また他のキャストやスタッフも一緒に仕事をしてみたいと思っていた方達ばかりでした。極めて日本的な映画が、死生感の違う海外の方に認めて頂けた、受け入れて頂けた事を嬉しく思います。」

【本木雅弘さん演じる小林大吾の妻、美香を演じた広末涼子さんからのコメント】
「日本だけでなく、海を超えて、この作品がたくさんの人々に愛してもらえる事を本当に嬉しく思います。音楽、風景、物語り‥、そして本木さん、全てが美しい作品だと、賞を頂いて改めて感じております。『おくりびと』という作品に参加出来た事を誇りに思います。滝田さんはじめ、スタッフの皆様に感謝しています。」

(Report:Nozomi SAWAI)