不朽の名作『12人の怒れる男』をロシアの巨匠ニキータ・ミハルコフが現代ロシア版にリメイク!

 1957年に登場した『十二人の怒れる男』は社会正義を謳いあげた法廷ドラマとしてアメリカ映画史に燦然と輝いている。緊迫感に溢れた展開と計算されつくした演出が、陪審員それぞれのキャラクター設定の妙とあいまって、なによりも製作された時代の風潮が色濃く反映される構造になっている。1997年にウィリアム・フリードキンが「12人の怒れる男/評決の行方」として再びテレビ映画化するなど、<法廷ドラマの原点>といわれる所以で、この1957年作品は世界中の法廷ドラマに多大の影響を与えている。

ロシア版にリメイクされ日本でも裁判員制度が来年導入される中、「家栽の人」(小学館)などの漫画原作作品の毛利 甚八さん、弁護士(東京弁護士会)の酒井 幸さん、弁護士(第二東京弁護士会所属)の河津 博史さんをお招きして裁判員制度まる分かり試写会が開催されました。

■イベントの内容
河津氏:本日は、内容も時間もボリュームのある映画をご覧頂いたあとにお残り頂いてありがとうございます。これから裁判員制度についてのトークショーを行います。
    わたくし、弁護士の河津と申します。宜しくお願いいたします。
    ゲストをご紹介いたします。
    漫画「家栽の人」の原作者で日弁連発行の裁判員制度漫画「裁判員になりました」の原作を担当された毛利甚八さんです。もう一人、法廷用語の日常語化に関するプロジェクトチーム座長であり、裁判員制度に関する日弁連としての広報を担当していらっしゃいます弁護士の酒井幸さんです。宜しくお願いいたします。
    まず、『12人の怒れる男』をご覧になった感想をお聞かせ願います。
毛利氏:ヘンリー・フォンダのオリジナル『十二人の怒れる男』よりも面白かったです。
    12人の審議と通して、ロシアの現実がうまくあらわされている。陪審員長の「評決を出すだけで終わりじゃない」という言葉が印象的だった。
酒井氏:久しぶりに圧倒される映画を観ました。民族問題、社会問題ときちっと向き合った映画だと思いました。裁判に市民が参加することの意味がそれぞれの人生で経験したものを反映するものであるということを示した映画ですね。
河津氏:さて日本でも、いよいよ来年から裁判員制度が始まります。世界的にみると市民が裁判に参加するというのは当り前の制度です。どうして今裁判員制度をスタートするのか?毛利さんに伺います。
毛利氏:憲法を良いと思っている裁判官はいじめられてきた。昔から検察が強いんです。裁判官が検察の目の色をうかがって裁判しなければいけない。自由にものが言えない状況があるんですね。2003年に起こった「志布志事件」では、弁護士が長期の拘留を止めるように裁判所に申し立てたところ、裁判官に「検察を怒らせちゃいけませんよ」と言われたそうです。そういう現実があるんです。冤罪に泣く人たちが大勢いる。こういうことで制度が生まれたんです。もちろん裁判員制度に反対する人は大勢います。反対する裁判官や検察は“市民をバカだと思っている”“自分たちのしてきた仕事に決して間違いはないと信じている”人たちです。どうしても裁判員制度を成功させなければなりません。裁判員になればもちろん覚悟が必要ですし心の負担になると思います。でも、裁判に参加すれば社会を見る目が変わってきます。メディアの見方なども変わるでしょう。
河津氏:裁判員に選ばれた市民には何が求められるんでしょうか?
酒井氏:法律がわからないからできない、と思ってらっしゃる方がいますが、裁判員に法律の知識がないというのは大前提です。法律についての説明は裁判官の役目です。裁判員は検察が示した有罪の証明が信用できるものかどうかを判断することが仕事です。裁判所という閉ざされた環境の中で暮らし続けている裁判官の世界観を市民とのふれあいが広げるということに期待します。
河津氏:ありがとうございました。
    では、会場のみなさんからの質問を受け付けます。

Q:どうしても人を裁くことが怖いです。逆恨みされたりするんじゃないでしょうか?
河津氏:世界に目を向けると市民参加は当り前です。80以上の国で市民が裁判に参加する制度があるが、逆恨みされて襲われたりということはほとんど聞きません。日本でも裁判官が被害を受けたりということはありません。裁判員は氏名も住所も公表されませんし心配はわかりますが、現実的にはほとんどありません。
  Q:裁判員に選ばれたら3日間裁判に行かなければならないそうですが、ホテルなどにカンヅメにされるんでしょうか?
河津氏:まず、そういうことはありません。
    アメリカでは、報道が過熱している裁判などでまれに安全のためにそういうこともあるそうです。
    例外的に、離島に住んでいる人などはホテルに泊まるということがあります。
  Q:自分が選ばれたら周りのひとに話していいんですか?
河津氏:会社の人や家族や友人には話しても大丈夫です。ただし公表してはいけません。
    公表というのはインターネットなどに書き込んだりすることですね。
  
河津氏:みなさん、ありがとうございました。
毛利氏:最後に一言。裁判員制度を不安に思っている人はまず、裁判の傍聴に行ってみましょう!これが裁判を理解する第一歩だと思います!