7月19日(土)から始まったSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2008。いよいよ27日(日)にクロージング・セレモニーが行われ、短編国内コンペティションと、長編国際コンペティションそれぞれの受賞作品が発表された。

映画祭実行委員会副会長である川口市長の岡村幸四郎、総合プロデューサーの八木信忠より挨拶が行われ、続いて短編国内コンペティションの部門各賞が発表された。奨励賞には、柴山健次監督の『黒振り袖を着る日』と、吉井和之監督の『覗』の二作品が選ばれた。

プレゼンターは審査委員長の高嶋政伸がつとめ、『黒振り袖を着る日』については「失われつつある日本の風景が映し出されていて、土地をめぐるにおいのようなものが香ってくる、懐かしくて心が温かくなる作品です。最後の結婚式のシーンでは、ぐっとくるものがあります。私事ですが、来月私も結婚する事となっております。」と、婚約者を紹介し拍手を受けるという場面も。
『覗』については、「この作品は、ワンカットごとに緊張感溢れています。映画をすごく研究していると思いました。魔の時間を作り出す、素晴らしい作品だと思います。」とコメント。
柴山監督は、「この作品のねらいは、結婚式のシーンで相手の女性に皆さんが恋をし、自分も結婚したいと思うような幸せな気分になって頂く事でした。」、吉井監督は「この作品は、作家性というよりクオリティの高いスタッフの思いが集結したものです。すぐれた映画祭がある街は、共に成長していくと思います。」と、授与されたトロフィーを手に受賞の喜びを語った。

最優秀賞作品賞はHAMU監督の『エレファント・マド』。高嶋審査委員長からは「とても風変わりでチャーミングなラブストーリー。監督の粘りを強く感じました。今は空前の消費社会ですが、消費できないものがあるとすれば、映画への情熱なのではないかと感じました。そして、そのような作品は観た人の心を打つのだと思います。」という祝福のコメントが述べられた。
HAMU監督は「今、子供の世話をしていた時に受賞を聞いて本当に驚いています。」と一緒に子供と登壇し、喜びを語った。

高嶋審査委員長からは「審査員の皆さんと、今回の作品の傾向を話し合っていて、今回だけにも限らず、いい機材が出てきて映画作りが身近なものになって、クリエイターの幅が広まっているんじゃないかという話になりました。そうなると、映画作家自身が、自分にしか撮れない作品のオリジナリティについて厳しく向かい合わなければいけなくなってきているのだと思います。映画とは何かと考えた時に、私は驚きなのではないかと思います。1本の映画が観た人の人生を変えてしまうような、地球がひっくり返るぐらいの作品を、これからも作り続けて下さい。」という総評が述べられた。

次に、長編国際コンペティション部門各賞の発表に移り、撮影監督のリカルド・デ・アンジェリス氏とプロデューサーの甘木モリオ氏がプレゼンターをつとめ、審査員特別賞にアナス・モーゲンターラー監督の『記憶の谺』と、ジャン・ルイ・ミレジ監督の『リノ』が選ばれた。
『記憶の谺』のアナス・モーゲンターラー監督は、現在次回作の撮影中により今回の表彰式には同席できず、ボイスメッセージでデンマーク・フィルム・インスティテュートのマネージャーより、「デンマークの映画作品が受賞したという事で、非常に嬉しく思います。」、本作品のプロデューサーより「この映画にとっての初めての受賞で、とても意味のあるものになりました。」というコメントが届いた。
甘木モリオ審査員からは、「『リノ』については、自分の子供を息子役として、その父親役として監督自分自身が出演し、プライヴェート・フィルムにはならずに一級の映画作品として仕上げた監督の手腕という三つの驚きがありました。」とのコメントがあり、監督からは「私は日本語がわからないので、この数日間自分の周りで何が起こっているのかがわかりませんでしたが、今回受賞という事で、またしても何が起こっているのかわかりません。」とユーモアを交え喜びをコメントした。

脚本賞には、イルマル・ラーク監督による『ザ・クラス』が選ばれた。脚本家の今井雅子審査員がプレゼンターをつとめ、「この作品は観ていて本当に苦しく、人間の尊厳とは何かという事について考えさせられました。現実のいじめをよく知る監督にしか描けない、力強い作品です。」とコメント。
監督からは「この作品は私一人で作り上げたものではありません。俳優の皆と脚本を直して作り上げたものです。関わってくれた人々に感謝し、喜びを共有したいと思います。」と喜びを述べた。

監督賞にはホセ・エンリケ・マルチ監督の『ガブリエルが聴こえる』が選ばれ、審査員をつとめたホン・サンス監督より「私たち5人という審査員の数は決して多いものではありませんが、全員がこの監督賞にふさわしいクオリティを持っていると思っております。この賞が監督のひとつの励みになれば。」と延べ、監督からは「他にも素晴らしい作品があった中、私の作品が受賞でき大変びっくりしており、嬉しく思っています。作品に関わった仲間たちとこの喜びを分かち合いたいです。この映画祭の組織委員、および関係者の皆さんに心から感謝しています。」と喜びを語った。

最優秀作品賞にはステファン・シャイファー監督とダイアン・クレスポ監督による『幸せのアレンジ』が選ばれた。本日、監督たちは次回作の撮影中という事で、「感謝の気持ちでいっぱいです。インディペンデント映画というのは、作るのも観るのも苦労が多いですが、17日間の低予算で撮影された、違う文化の友情を描いた小さな作品が、違う文化を持つ国で受け入れられた事を嬉しく思います。」というボイスメッセージが届いた。
審査員長のダニー・クラウツ氏は、「この映画には、伝統的なコミュニティーでの女性の立場と、ユダヤ教徒とイスラム教が実は似通った点が多いという二つのメッセージが描かれています。願わくば、二つの宗教の間に平和がもたらされますように。今回の12作品は、どれもレベルが高く審査の際には活発な議論がなされました。多くの作品の中では子供が多く登場しており、この機会に子供たちの演技を評価したいと思います。審査員を代表して、この映画祭関係者の皆さんにお礼を申し上げます。この映画祭には、明るい未来が約束されていると思います」と語った。

最後に、瀧沢裕二ディレクターから「この映画祭が始まって今回で第5回目を迎え、日本、海外の作品ともに応募作品の質が上ってきていると思います。今後も、このような素晴らしい作品が集まり、皆さんに新しいエンターテイメントを提供し、デジタルシネマの先駆者的存在になるよう、努力していきたいと思います。」という抱負を込めたコメントが述べられ、表彰式は終了した。

(池田祐里枝)