高画質の映像と舞台の臨場感の立体的な再現を追究した音声と音響によって、まるで歌舞伎座にいるかのような迫力が魅力のシネマ歌舞伎。三遊亭円朝が口演した「人情噺文七元結」を、巨匠山田洋次監督が補綴(ほてつ=改訂)し、新たな映像作品として誕生させた。
当映画祭では、7月19日(土)にワールドプレミア上映され、2回目の上映となった7月22日(火)には、山田洋次監督と中村勘三郎さんによる舞台挨拶が上映後に華やかに行われた。

観客と一緒に鑑賞された山田監督と勘三郎さんにとり、大きなスクリーンでこの作品を見るのはお二人共初めて。
山田監督は、「実際に当日劇場で見ている観客の拍手が入っているんですが、本日の観客も同じように笑ったり拍手したりが重なり、楽しさが倍増しました。この仕事をやって良かったと思っています。勘三郎さんから“大丈夫です、やってください。”と言われ、安心してテキストに手を入れるような大胆なことをやらせてもらいました。とても楽しい仕事でした。この他にも『連獅子』も撮りました」と語った。
昨年の1月から3月までSKIPシティ内の敷地で、映画『母べえ』を撮影された山田監督にとっては懐かしい地での上映となり、特別な感慨があったという。

お二人の夢の組み合わせが実現した経緯について勘三郎さんは、「2005年のニューヨーク映画祭で、山田監督がシネマ歌舞伎『鼠小僧』をご覧になったことがきっかけです。祖父の六代目菊五郎が「鏡獅子」を小津安二郎監督に撮って頂いているので、今回ぜひとお願いしました。(映像化にあたって)新しくするのは不安があったが、“寅さん”のように温かいのでシネマ歌舞伎の方が面白い」と語った。
今回の演出について山田監督は、「演出家の視点としてどう撮るかというこだわりがないと、なんとなく映しているだけになる。カメラ7、8台を使い贅沢な撮り方をさせてもらいました」と語った。美術やセットにも山田監督のリアルなこだわりが散りばめられている。
勘三郎さんは「昔の歌舞伎は舞台セットや衣装などとてもリアルだったので、僕らもやんなくてはいけないと再認識しました。山田監督には、これからも新しい作品をつくってほしい」と熱意を込めて語った。
今後のシネマ歌舞伎について「シネマ歌舞伎に僕の好きな素材があるでしょうし、機会があればやってみたい」と意欲を見せた山田監督に、会場から大きな拍手が上がった。

『人情噺文七元結』は、10月18日(土)、『連獅子』は来春、松竹系で公開される。

(Report:Miwako NIBE)