アフリカのコートジボワールの施設「センター・オブ・ホープ」。この運営者であるロッティ・ラトロウスは、エイズ患者の苦しみや傷みを和らげるために力を注いでいる。
家族と遠く離れ、使命感をもって働くロッティだが、彼女は自分の事を“エゴイスト”と言うのだった。彼女の行動に密着したカメラが、その真意を描き出す。
『エゴイスト』のシュテファン・アンスピッヒラー監督が、上映後に登場。
「この映画祭に参加できる事、日本の文化を体験できる事を大変嬉しく思います。私の作品が上映できて光栄です。」と挨拶。
観客や、本映画祭のディレクターを務める瀧沢裕二からの質問に答えた。
以下、Q&A内容。

●この作品は21日間で撮影されたそうですが、何に一番苦労しましたか?
「苦労した事は2つあります。1つは、資金的な問題です。この種の映画というのは、商業的な目的で作られるものではないのでスポンサーを見つけるのが大変だったのですが、ドイツ、そしてアメリカから沢山の資金的な支援を得る事ができました。
2つめは、大変な環境の中での撮影です。死に行く人々を撮影していく中で、私たちは観察する側にはいたくありませんでした。彼らの活動と共にある、同じ側にいる事を望みました。ですから、最初の1週間はカメラがまったく無い状態でいたので、彼らは私たちが撮影のためにそこにいるのを知らないくらいでした。観察する側にはなりたくなかったという事が強くありましたね。」

●ロッティさんの家族がこの映画を観た後の感想は?
「反応は非常によいものでした。フィルムを撮っていく中で、家族が一体となるような事がありました。長男の息子がロッティさんと2年間絶縁状態となり、ロッティさんは苦しんでいた訳ですが、そのような気持ちもフィルムを観る事で理解できるようになりました。
家族全体が、この映画はやりすぎておらず、現実を捉えた自然なものであるという反応をしていました。」

●「センター・オブ・ホープ」は何年ほどの歴史があるのでしょうか?
また、何故彼女を映画に撮ろうと思ったのでしょうか。監督自身がロティさんに対して思う事は?
「センターは1999年から続いています。その前も、ロッティさんはコートジボワールの近くにあるマザー・テレサの施設で活動をしていました。
私はNYで映画の勉強をした後、自分の映画を作ろうと思いました。何かストーリー性のある映画を作ろうと思っていたのですが、ドキュメンタリーを撮ろうとは思っていませんでした。ちょうどその頃に、彼女のショート・ドキュメンタリーを観て非常に感銘を受けました。当時、私は映画作りにおいても、人の持つ使命感について考えていました。自分にとってのやる事は映画を作る事で、ロッティさんはセンターで働くという事だと思います。宗教的にならずに、使命というものをこの映画で表現したかったのです。」

●最も描きたかったテーマを簡単に言うと?
「人が、これだと思う事をやった時に他の人に影響を与え、インスピレーションを与えて動いて貰える事ができるという事ですね。
アフリカまで行って活動をしなくても、自分にとって大切な事を見つけて活動する事によって、世界が変わっていくのではないかと思います。」

●政治状況が厳しいところで撮影する中で、苦労した事は?
「コートジボワールの文化庁に撮影許可を得なければならず、撮影が文化庁の監視によってコントロールされるという場面もありました。
軍事的な事を映してはいけないという事だったので、国際空港を撮影撮影する時にも、沢山の軍隊を映さないようにロッティさんだけに絞って撮影しました。」

●“人の愛を経験すれば、何年生きたとしても満足”というロッティさんの言葉に感動しました。彼女のような完成を磨くには何をしたらいいと思いますか?
「自分の身の回りに目を向ける事が大切だと思います。苦しんでいるのは、遠くにいる人たちだけではありません。日本に来る前にもロティさんと話したのですが、もし彼女が日本にいたならば同じ活動を日本でしたでしょうという事です。
自分の方からドアを開いて、一歩出て手を差し伸べる事が大切です。」

●次回作の予定は?
「今のところ計画は2つあります。1つはインドで制作中なのですが、いずれは世界のリーダーとなり得るインドについてドキュメンタリーとして描いています。
2つめは、フィクションで来年1月、2月に撮影予定で、アメリカと英国の共同制作になります。」

(池田祐里枝)