本年度カンヌ国際映画祭<ある視点>部門 正式出品『TOKYO!』レオス・カラックス来日記者会見
世界最高のクリエーター”ミシェル・ゴンドリー×レオス・カラックス×ポン・ジュノ”奇跡のコラボレーション! 強烈なオリジナリティをもつ3人の監督が、豪華キャストを迎え、”世界で最もクールな都市”TOKYOを舞台に、新たなる日本映画を誕生させる。
本年のカンヌ国際映画祭でも喝采をあびた映画『TOKYO!』晩夏の公開を控えて、ポン・ジュノ監督来日に続き、レオス・カラックス監督が来日し、16日(水)に記者会見を行った。当日は『ポーラX』以来、9年ぶりの新作ということもあり、踏み込んだ内容の会見となった。
──他者に対して排他的な都市、「TOKYO」というイメージを持つ人もいるかと思うのですが、カラックス監督の中では異質なものを受け入れられない都市というイメージなのでしょうか? TOKYOというテーマが与えられた時にこの作品を作った理由を聞かせてください。
このシナリオはパリで数週間ですばやく書きました。東京の事もあまり知らずに書きました。東京という街を思い描いたときに、確かに外部から来てすぐに溶け込める街という風には考えられないと思います。この映画のテーマ自体が自分と他者。背景はどこでもありえるということです。
──下水道を怪人の住処として選ばれたのは、東京からの発想なのでしょうか。あるいは普遍的な発想なのでしょうか?
日本のプロデューサーの方から、この話を頂く数週間前の話なのですが、パリの中心を歩いていたときに、ふと地下からマンホールを開けて怪人が現われ、皆を倒していくというアイデアが浮かびました。そして今回の作品の提案を頂いたときに、この考えを入れ込んで作品を作ろうと、ドゥニ・ラヴァンを主役に据えようと考えました。
──怪人はどうしておかしな言葉をしゃべるのでしょうか?
下水から現われる怪人を想像したときに、非常に原始的な、ほとんど消えかかっている文明の人というのを想定しました。世界に同じ言語を話す人が2、3人しかいない、そういう文明の人を想像しました。というのも、文明や文化が違う、言葉が通じない人たちとの関係を描くのが面白いと思いましたし、今回は人との関係をテーマにしているので、世界で2人か3人しか同じ言語を話す人がいない事を想定するのが面白いと感じました。
──「メルド(糞)」というタイトルにした理由は?
“クソ”というのは、好きな言葉ですし、すぐにこのタイトルは思い付きました。この怪人は、私達みんなの子供のような存在ですから、子供は「うんこ」とかすぐ言いますよね。
──ドゥニ・ラヴァンのセリフに「人間は大嫌いだ、日本人は一番嫌いだ」というようなセリフがあって、最初に観た時にすごくショックを受けました。あなたはどんな意味を込めてあの言葉を入れたのでしょうか?
私は人間は嫌いだ、でも人生は好きなんだよ、ばーかと言っています。日本については、この映画は先ほども言いましたように、日本以外を舞台にしても当然成立する映画です。今回は東京という事で日本のことを盛り込んでいますので、できるだけ、ばかばかしい理由をこの人種差別的な言葉に付けないといけないということで、ああいう内容になっています。ですから、他の国であれば、もしかしたらお前は耳が小さいから嫌いだとか、足が大きいから嫌いだとかそういう風にもセリフは作れる訳で、それに対して検事は、少なくとも私はフランス語で人種差別的な外国人は嫌いだという事を、私の返答として書きました。
──「ポーラX」以来の作品でこの短編を選んだ理由は?
この9年の間に他のプロジェクトにも携われていたと思うのですが、そのプロジェクトはどうなったのでしょうか? 教えてください。
今回の作品を受けた理由は、ここ数年自分の映画というのが撮れていなくて、今回の提案は非常に短い時間でシナリオを書き、短い時間で撮影をしてあまり資金もなく、デジタルでの撮影をする。私にとっては全てが目新しい事だったので、非常に興奮する提案で、そして小さい映画ではありましたが、年内には撮るという事が決まっていましたので、引き受けました。数年来映画も撮っていませんでしたし。他のプロジェクトについて、どうして最終的に映画までこぎつけなかったのかについてですが、それはお金の問題ではありません。お金はなんとかすれば見つかるのですが、一緒に仕事をするにはぴったりというような、心が通じ合う人が見つからなかったからです。