「百万円貯まったら、この家を出て行きます。」
3年ぶり、待望の映画主演作となる蒼井優が今回演じるのは、資格なし、特技なし、友達なし、就職もできずバイト生活を送る佐藤鈴子──21歳の女の子。

10日(木)、映画『百万円と苦虫女』プレミア試写会にて主演の蒼井優をはじめ、森山未來、ピエール瀧、監督のタナダユキが登壇し、舞台挨拶を行った。
蒼井が演じた<鈴子>はある事件がきっかけとなり、百万円貯まるごとに誰も知らない土地へと移り住む生活を送る女の子。海の家のかき氷作りのバイト、桃畑農家でのバイト、ガーデニングコーナーのバイト、様々なバイトを経験していくが、実際の蒼井はバイト経験がないということで、「もしやるなら?」との質問に「とても暇なレンタルビデオ屋のバイトがしてみたいです。1日10人くらいしかお客さんが来なさそうな(笑)。あ、とても暇な映画館のバイトでもいいです」とにっこり。
森山は「高校のときに登録制のピッキングバイトをしていました」と普通の表情で答えたのだが、ピエールから「登録制のピッキングって……危ないよ!」とツッコミを入れられると、ようやく間違いに気づいたらしく「あ、登録制のパッキングでした」と、天然ボケを披露してしまい思わず照れ笑いを浮かべた。

脚本も手がけたタナダ監督は蒼井に対して「最初から蒼井さんが(主演)やることは決まっていたのですが、私がちょうどこのお話を受けたとき、彼女は『フラガール』でたくさん賞をもらっていたときだったので正直ビビりましたよ(苦笑)。でも、例えばなんですが、パーティー会場とかにいてもうまく渡り歩く感じのタイプには思えなかったんですよ(苦笑)。だから不器用なんだけど必死に生きている女の子の話にしようと思ったわけです」と説明し、森山とピエール瀧も蒼井の印象を「見た目は華奢だけど中身はがっしりしている。この映画への出演を決めたのは、蒼井優という人が見たかったからです」(森山)、「マネージャーから蒼井さんと仕事をすると聞いて“恋人役?”と聞いたら“もちろん違います!”と返されました(苦笑)。蒼井さんはどんな子かなと思っていたけど、イメージ通りの裏表がない、このままの人でした」(ピエール)と語った。

蒼井も「森山くんは、“なんて繊細なお芝居をする人だろう”と思いました。ドラマ『WATER BOYS』の元気な印象が強かったから。ピエールさんはよく食べる人! 食べている姿は幸せそうでしたね(笑)。穏やかであたたかい空気に包まれていて、みんながピエールさんを見てほほ笑んでいました」と、キャストたちのアットホームな雰囲気が伝わるコメントを残した。

蒼井が「この脚本だったからこそ、普段は避けている主演をやらせてもらおうかなと思いました」と自信満々にアピールする本作は、カナダの第31回モントリオール世界映画祭への出品で海外初披露が決定!! また、韓国での上映も決定したそうで監督・キャスト一同大喜び。蒼井が恥ずかしがりながらも笑顔で「感無量ですね。国を越えても、言葉の壁を越えても伝わる作品だと思います。本作が少しでも誰かの大切な作品になればいいですね」とコメントすると、ピエールも「モントリオールと言ったら、僕がずっと目指してきたところなのでうれしいです。でも僕は本作の中で福島弁をがんばったので、それが字幕とか訳されてしまうと僕の役は半分死んだ感じになっちゃいますね(苦笑)」と会場の笑いを誘った。

そして蒼井は「私はあまり自分が芸能生活をやっているという自覚がないので、この作品が自分のキャリアにおいてどういう位置づけになるかはかわかりませんが、私にとっておそろしく大切な作品というのは間違いないです。これからも女優業をのんびりやっていきたい」と明かした。

(Report:Naomi Kanno)