5月14日から25日まで12日間にわたって開催された第61回カ ンヌ国際映画祭が閉幕、25日の夜に授賞式と受賞者記者会見が行われた。

◆授賞式セレモニーにはデニス・ホッパーやロマン・ポランスキーもプレゼンター役で登場!

 オープニングセレモニーに続き、授賞式セレモニーのMCを務めたのはフランスのコメディアン、エドゥアール・バエル。審査員長を『ユマニテ』『フランドル』で知られるブリュノ・デュモン監督が務めたカメラドール(新人監督賞)のプレセンターとして登場したのはヴィム・ヴェンダース監督のコンペ出品作『パレルモ・シューティング』に出演したデニス・ホッパー! かつて自分が初監督作『イージー・ライダー』でカメラドール受賞したこと、そして出演作『地獄の黙示録』がパルムドールを授賞したことに言及し会場を沸かせていた。
 短編映画部門は審査委員長を務めた台湾のホウ・シャオシェン監督が贈呈。脚本賞のプレゼンターは昨年の脚本賞受賞監督であり、今年はある視点部門の審査委員長も務めたドイツの俊英監督ファティ・アキン。女優賞のプレゼンターはジャン・レノ、男優賞はヴァレリー・メルシエ。審査員賞はミラ・ジョヴォヴィッチ、監督賞はフェイ・ダナウェイ。グランプリはロマン・ポランスキー監督。そして最高賞パルムドールのプレゼンターを務めたのは、クロージング作品『ホワット・ジャスト・ハプンド?』に主演したロバート・デ・ニーロだった。

◆カンヌのコンペ初挑戦作で最高賞を授賞したフランスのローラン・カンテ監督作『クラス』

 残念ながら今年のカンヌは天気も悪い上、作品も不作の年だった。コンペ作品も突出した作品は見当たらず、ドングリの背比べ状態。名だたる監督たちの作品はいずれも質は高かったが、残念ながら過去の自作を超える代表作をものにできた監督は見あたらなかった。
 そんな混戦模様を制して、パルムドールに輝いたのは、最終日前日24日目に上映されたフランスのローラン・カンテ監督の『クラス』だった。

『クラス』は元教師で、現在は作家&ライターとして活動するフランソワ・ベガドーが自身の教職経験をもとにして執筆した自叙伝を映画化、フランスの教育現場が抱える問題をパリの中学校を舞台にして描いた社会派映画。生徒たちと真正面から向き合う国語教師(F・ベガドーが自演!)の姿をドキュメンタリータッチで活写したローラン・カンテ監督は、フランス国立高等映画学院(IDHEC)を卒業後、テレビ番組のドキュメンタリー制作を経た後に映画界に進出した俊英で本作が長編第4作目。カンヌのコンペ初挑戦での快挙となった。
 素人出演者を起用した演出に定評があるローラン・カンテ監督は今回、生徒役に全く演技経験のない本物のパリの中学生24人をオーディションで選出。起用後は入念なワークショップを重ねて演技指導をしたという。

 今回、3本のフランス映画が出品されたコンペ部門だが、地元のフランス作品が最高賞に輝いたのは、87年の『悪魔の陽の下に』以来、21年ぶり。授賞式でタイトルが読み上げられるや、会場からは驚きの声と同時に温かな拍手がおくられ、その後に行われた受賞記者会見には24人の“生徒”も登壇し、喜びを分かち合っていた。
 審査委員長のショーン・ペンは『クラス』について「授賞理由のひとつは作品の完ぺきな一体化にある」とし、「演技も、脚本も、すべてが魔法のように素晴らしい。単純に、誰かに見せたい映画であるし、テーマ性も時代をこえて心に響く」と絶賛した。
(記事構成:Y. KIKKA)