第61回カンヌ国際映画祭便り【CANNES2008】1
第61回カンヌ国際映画祭が5月14日から開催されている。映画祭はまだ序盤だが、今年は初日から天気が崩れてうすら寒い。天気予報でも映画祭期間中は悪天候が続くらしく、ちょっとガッカリだ。映画祭3日目の昨日も雨が降ったり止んだり。昨夜はアルノー・デプレシャン監督のコンペ出品作『クリスマス・テール』のソワレ(ドレスコードのある夜の正式上映)の観客が列を作り出した6時過ぎを見計らったように大雨になってしまい、せっかくお洒落してレッドカーペットを歩こうときた人たちがとても気の毒であった。気のせいか、街なかの喧噪も例年を下回っているような感じがする。カンヌ映画祭の取材は今回で15回目を数えるが、こんな年は初めてだ。
だが、まだ映画祭は1/4を過ぎたばかりなので、気を取り直そ
う。寝不足の日々が続くのは確実だけど、イイ作品との出会いとイイ取材ができることを信じながら、怒濤の12日間を乗り切っていくつもり。美味しい料理とワインの力を借りてね…。
◆今年は、あのショーン・ペンが審査委員長を務めるとあって、より注目された長編コンペティション部門!
今年は、監督としても名を馳せる個性派俳優ショーン・ペン(カンヌでは97年に『シーズ・ソー・ラヴリー』で男優賞を受賞)が審査委員長を務めるということで話題を集めた長編コンペティション部門だが、残念ながら日本映画の選出は全く無く、韓国映画もナシ! 一方、南米映画の台頭は著しく、アルゼンチン映画2本、ブラジル人監督の作品2本が選出されたコンペ部門に限らず、映画祭全体がラテン色に染まる年となった。
ふだんから政治的発言が多く、スリランカの大津波を題材にしたドキュメンタリー『サード・ウェーヴ』をカンヌ映画祭事務局に掛けあって、“審査委員長スクリーニング”として特別上映を決定させる等、政治意識の高いショーン・ペンの下に集ったコンペ部門の審査員メンバーは8名。ナタリー・ポートマン、ジャンヌ・バリバール、アレキサンドラ・マリア・ララという米・仏・独の女優陣に、『ナルニア国物語 第2章』では敵役を務めているイタリアの俳優&監督のセルジオ・カステリット。『天国の口、終りの楽園。』『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』で知られるメキシコ人監督のアルフォンソ・キュアロン。06年のカンヌ映画祭で5人のアンサンブル・キャストに男優賞をもたらした『デイズ・オブ・グローリー』の監督ラシッド・ブシャール。自身の半生をコミカルに綴ったアニメーション『ペルセポリス』で07年のカンヌ映画祭審査員賞を受賞したイラン出身のマルジャン・サトラピ監督。『トロピカル・マラディ』で04年のカンヌ映画祭審査員賞を受賞したタイのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督。
出品数は22本。パルムドール受賞歴のあるベルギーのダルデンヌ兄弟(99年の『ロゼッタ』、05年の『ある子供』で2度受賞)、スティーヴン・ソダーバーグ(89年の『セックスと嘘とビデオテープ』)、ヴィム・ヴェンダース(84年の『パリ、テキサス』)を始め、カナダのアトム・エゴヤン、トルコのヌリ・ビルゲ・ジェイラン、ジェームズ・グレイといったカンヌの常連、そしてクリント・イーストウッド、アルノー・デプレシャン、フィリップ・ガレル、ウォーター・サレスら実力派監督が多数参加しているので大いに期待したい。
◆今年のオープニングを飾った『ブラインドネス』に日本から伊勢谷友介と木村佳乃が参加!
今年のオープニング作品は、『シティ・オブ・ゴッド』『ナイロビの蜂』で知られるブラジル人監督フェルナンド・メイレレスがポルトガルのノーベル文学賞受賞作家ジョゼ・サラマーゴの純文学小説「白の闇」をカナダ・日本・ブラジル合作で映画化、国際的キャストを起用したコンペ出品作だ。この作品は、視界が真っ白になって失明する伝染性の奇病が蔓延、一切の介護もなく精神病院に隔離された盲人たちの本性をむき出しにした熾烈なサバイバル模様を描いた衝撃作。
伊勢谷友介は、この奇病に最初に冒されてしまう男の役。そして木村佳乃は彼の妻の役という物語のキーとなる重要な役どころでの出演だ。
残念ながら眼科医役のマーク・ラファロは現地入りしなかったが、ジュリアン・ムーア、ガエル・ガルシア・ベルナル、ダニー・グローヴァーらのスターと並んで赤絨毯を歩いた2人は、公式記者会見でも通訳を介さず、自ら英語で対応。特に伊勢谷友介の機転の効いた返答ぶりにはちょっとビックリ! 同じ日本人として何だか誇らしい気分にさせてくれた。
(記事構成:Y. KIKKA)