2008年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門 審査員賞を受賞した、黒沢清監督『トウキョウソナタ』の記者会見付き完成披露試写会が4日(水)に行われ、多くのマスコミ陣および関係者が押し寄せる中、黒沢清監督ほか、出演者である小泉今日子、香川照之、小柳友、井之脇海が登壇した。

当日はまず、出席できなかったカンヌ映画祭・受賞式に代わり、フランス大使館文化参事官のアレクシス・ラメックス氏より、黒沢監督へ賞状の授与が行われた。ラメックス氏は「傑作と言って間違いない」と断言し、その言葉を聞いた監督は「僕が代表して賞をいただきましたが、スタッフ・キャスト一丸となって作られたものなので、これは全員に与えられたものだと思います。でも、こうしてもらってみるといいものですね……」と感慨深げに賞を見つめた。

夫婦役を演じた香川と小泉もそれぞれ「カンヌから戻ってきたあとに、受賞の知らせを聞いたんですが、まだ夢のような気分。NHKのニュースに、本作のことが取り上げられているのを見たときは鳥肌が立ちました。今も浮かれポンチで(笑)。確かにカンヌではとても手ごたえを感じたんです。“これほど拍手をもらったことはないんじゃないか?”と思うくらい祝福されて。カンヌでは本作のおかげで幸せな時間を過ごせました」(香川)、「私はカンヌに初めて行って、(劇中の)家族全員でレッドカーペットを歩けたことが何よりうれしかったです。その後、日本に戻ってきてから受賞の知らせを聞いたときには何だか怖いというか、身が引き締まる想いがしましたね」(小泉)と、受賞の喜びを語った。

ある日突然リストラを宣告されるも、それを家族に言えず苦悩する元・サラリーマンを演じた香川は、役作りに関して「黒沢監督は9割9分、役者の動きまで考えられる方なので、僕は何の苦労もありませんでした。僕は監督が作る現場の空気を楽しんでいただけです。楽しい撮影はあっという間に終わってしまったので、いつか監督には10時間くらいの長い映画を撮っていただきたいです!」と懇願し、小泉も「監督の現場は、魔法にでもかけられたかのように気づくと撮影が終わっているんです。そんな楽しい現場だったから、みんなと家族になるのも容易いことでした。感謝しています」とほほ笑んだ。

監督も当初から香川と小泉をキャスティングに考えていたそうで、特に小泉に関しては「NHKのある番組でご一緒したことがあって、彼女は笑顔のときは“キョンキョン”って感じなんですけど、笑っていないときの彼女の、遠くを見通しているような目が好きで。物事の本質が彼女だけには見えているような、何かを予言するような目。今回ご一緒して、改めてすごい女優さんだと思いました」と絶賛。それには小泉もうれしそうにはにかんでいた。

また、本作はこれまでホラー映画を数多く撮ってきた監督とは全く違うジャンルの映画となったわけだが──。
「僕はホラーを撮ることが多いので専門のように思われていますが、今後は本作のように全く違うジャンルに挑戦したいと思っています。本作を撮ってみて、おもしろいという手ごたえを感じたので、今まで怖くてできなかったことなどにもどんどんチャレンジしていきたいですね」と意欲を見せた。

(Report:Naomi Kanno)