1969年に第一作が封切られて以来、笑って泣ける人情喜劇として親しまれてきた『男はつらいよ』が、今年8月27日に40周年を迎える。
シリーズ全48作のべ観客動員数は8000万人以上、数々の映画賞を受賞してきた本作だが、この節目の年を迎えるにあたり、松竹株式会社は40周年プロジェクトを始動する事となった。
プロジェクトテーマは「日本を明るくする」。映画本編で寅さんが地元柴又にふらりと長旅から帰ってくるように、8月27日に柴又での記念上映会を皮切りに、9月以降は寅さんが旅に出るかのごとくご当地上映も実地。
渥美清生誕80周年、13回忌でもあり、偲ぶ
そのほか、記念イベントやTV放送、出版や商品化に海外での展開など内容は多岐に渡る。

そのプロジェクト立ち上げを祝して、27日(火)に『男はつらいよ』誕生40周年祝賀プロジェクト発表会が行われた。
登壇したのは、松竹の大谷会長、野田専務、山田洋次監督、倍賞千恵子。
最初に、大谷会長による挨拶が行われ、当時宣伝部だったという自身が横浜駅で寅さんせんべいを販売したり、温泉が舞台のドラマ人気だった事にあやかって、渥美清と2人で赤坂の温泉で紙芝居をして映画宣伝を行ったという思い出を語った。
野田専務から40周年プロジェクトの全貌が発表され、続いて山田洋次監督、倍賞千恵子のスペシャルゲストが登壇。2人によるトークショーが行われ、Q&Aも行われるなどして思い出話に花が咲いた。
本当に楽しい現場で、休憩中にも渥美清と笑い合って止まらなくなり、よく山田監督に怒られたと倍賞千恵子。同時に厳しい現場でもあり、通行人の歩き方ひとつにも山田監督は指示を出したという。
会場には当時の楽しいエピソードに笑いがこぼれつつも、感慨深い雰囲気に包まれた。
以下、トークショー内容。

Q:広い世代に親しまれる人気シリーズとなった秘訣とは?

山田監督:「渥美清という人は他に比べる人がいないくらい素晴らしい俳優で、何しろ頭が良かった。この人がいたからじゃないでしょうか。」

Q:当時はアンチヒーローとして名を馳せた寅さんですが、若い人たちにはどのように観て欲しいですか?

山田監督:「一言で言うと先行き不透明な時代ですが、作品を観て寅さんの言葉を聞いたりして、人生捨てたもんじゃないと思って頂ければ。」

Q:さくらという人物は自分と似ているのでしょうか?

倍賞千恵子:「ほんの少ししか自分は入っていなくて、姉や母を参考にしました。監督には“ミシンを踏んでいる横をふっと見ると単行本が置いてあるような人なんだよ”とおっしゃっていました。
この作品は、玉手箱のような作品で、ずっと観ているうちに色んな発見があります。ファッション、人間性、風景などがたくさん散りばめられています。」

Q:一番思い出深い作品は?

山田監督:「作れなかった49作目ですね。」

倍賞千恵子:「第一作目で、渥美さんに“さくらっ!”と大声で言われた時ドキッとしたのを覚えています。」

さらに、寅さんファンには嬉しいお知らせとして全48作がHDリマスターされ発売される予定。当時の映像に近い美しい映像に加え、音声解説や新特典映像など充実した内容になっている。
公式HPも27日(火)より開設。
寅さんプロジェクトはまだまだ始動したばかり。あなたの街にも寅さんがやってくるかもしれない。

(池田祐里枝)