巨匠・山田洋次監督、吉永小百合主演の映画『母べえ』がついに全国公開。昭和15年の東京、希望を胸に明るく懸命に生き抜く姿と、あたたかな絆で結ばれた家族の愛を描く2008年最初の感動作です。また、来月7日に開幕する第58回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に出品が決まっており、世界からも注目されております。
そして、都内映画館で、初回上映終了後キャスト監督による、舞台挨拶が行われた。

山田洋次監督:こんなにも、完成からずっと封切りの日まで緊張の中待ち続けたのは、たくさんの映画を作ってきましたが、この作品が初めてだなと思います。

野上照代:素晴しい映画ができまして、私が書いた小さな作品がこんな立派な素晴しい映画になったことを嬉しく思います。ココにいらっしゃる方達は、この時代のことを知らないと思いますが。この映画を観ていろんなことを考えて頂けたら嬉しいと思います。

吉永小百合:『男はつらいよ』に2作出演させてもらって以来、長い月日が経ちますけれども、山田監督の映画が好きで、ずっと観てまいりました。弱い者、小さい者に対するとても優しい温かいまなざしを感じておりました。そして、今回の『母べえ』もそんな作品だと思います。素晴しい出演者の皆さんと一緒にやってきたこの作品はこれから一生忘れられない作品になると思います。

ーたくさんの作品に出演されている吉永さんでも、初日を迎えるというのは緊張なさるものですか?
吉永小百合:そうですね。一昨日のように雪が降ったらどうしようとか、こんな朝早くから出てきて下さる皆さんにどうかいい条件でと思って、ドキドキハラハラしておりました。

浅野忠信:撮影は約1年程前で、今日まで長い時間がかかったのですが、その間に自分がどれだけすごい人達と関わってきたのかとじっくり感じることができまして。もちろん撮影している間もそう思っていたのですが、今日を迎えるまでにありがたい出会と素晴しい作品に出演させて頂けたことに感動しております。

ー『母べえ』ファミリーの山ちゃんにはビッグニュースが届いたことを紹介させて頂きます。浅野忠信さんが主演なさり、チンギス・ハンを演じられた『モンゴル』がアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたことをここであらためて紹介したいと思います。おめでとうございます。アカデミー賞外国語映画賞は日本人としてノミネートされたのは山田洋次監督が撮られた『たそがれ清兵衛』以来ということもあわせてご紹介させて頂きます。

壇れい:私は野上久子をどういう風に、野上家の中に空気のように当たり前のようにいる存在でいるにどうしたらいいかと悩みました。でもこの映画を通して、チャコちゃんの生き方を通して、実はこの日といろんなことをポンポン言うかもしれないけれど、いろんなことを抑圧されて生きてきた人なんだなすごくと思いました。私は演じながら女性が当たり前に美しくお化粧してきれいな洋服を着たり恋愛をすることもやりたいこともできなかった可哀想な女性だなと思いました。今私たちはとってもいい時代に生きています。そのことに感謝しながらこれからもみなさんに喜んでもらえるような映画を作っていきたいと思いますし、みなさんもこの映画を見てなにか感じて頂けたら嬉しいです。

笑福亭鶴瓶:私はこの仙吉を演じるにあたり楽でした。監督からなにも言われること無く、じぶんてこんななのかなと思ったことがありました。初めこの『母べえ』ってけったいな名前だなと思ったんです。よう考えてみたら、ものすごく素敵だなって思ったんです。母べえという呼び方をする時代っていうのが、本当にいい、暖かい家庭でいいなと思いました。これからは、ママとかお母さんでは無くって、お母さんのことを母べえ、お父さんのことを父べえ、おじさんのことをつるべえと言ったらと思います。家に帰ったらお母さんのことを母べえと呼んでもらったらと思います。

ー鶴瓶さんは公開までずっと『母べえ』の宣伝部長を務めて下さいました。
笑福亭鶴瓶:いや、別にそんな体操なことは無くって、素敵な映画に出させてもらって、責任感じてしまって。今日も行かないかんと思ったんです。

志田未来:わたしのお母さんは友達のようなお母さんです。吉永さんが本当のお母さんだったらいいなと何度も思いました。わたしはお母さんのことをニックネームで呼んだりしています。

佐藤未来:怒られたりするんですけど、すごい適当な人です。でも細かいことはちゃんとやります。わたしはお母さんのことはママと呼んでいます。すごい優しくって、休み時間に遊んでくれて、それで、撮影が終わった後水族館に連れてってくれました。

笑福亭鶴瓶:そうなんですよ。この子がちょこちょこしてるから吉永さんが「つるべえ!」って怒ったんですよ。(笑)

吉永小百合:間違えちゃって。あんまりにもちょこまかしてるから、母べえとしては、注意しなきゃと思ったら、間違えて「つるべえ!」って言ってしまったんです。(照笑)

山田洋次監督:野上さんのお友達が試写を観て、「この作品は小さな茶の間を大きな時代が通り過ぎていくような映画だった。」と言われました。僕はへえって思った。言い当てられたというか、そんなつもりで僕は映画を撮った訳ではないんだけど、僕は嬉しかったし、同時に教えられた。映画な同時に観る人に教えてもらって、作り手が気付かされることがある。この映画をご覧になって、いろんな感想を持たれると思う。そうか、こんな時代があったんだな。この国はどうなっていくのか、こんな時代がまた来ては行けないとちょっとでも考えてもらえたら、こんな嬉しいことはありません。

吉永小百合:2ヶ月前から全国を歩いて回ってキャンペーンをして参りました。そして今日にみなさんの前にまいりました。今日が本当のスタートの日だと思います。日本中のお客さまの前で挨拶をしたいという風に思っております。それくらい私にとって大切な作品です。そして、この映画をご家族で観て頂きたい。10代の少年少女にも観て頂きたいと思っていります。今日は本当にありがとうございました。

(Report:Niizawa Akiko)