昨日のジャパンプレミアでの疲れはどこへやら、1時間あまりの記者会見の時間の中、ジョニー・デップはできる限り記者の質問に答えてくれた。

妻子を悪徳判事に奪われ、復讐という名の妄執にとりつかれた男、スウィーニー・トッド。心に怒りや苦しみ、生きる辛さという、言葉を変えれば情熱的な感情を内在させながら、それらをあくまでも表情や歌によって表現しなければいけなかったスウィーニー・トッドは彼にとってどういうキャラクターなのか。

《ジョニー・デップ》
A.「自分の演技を抜きにして、やはり一番スゥーニーが魅力的な役ですね。彼は非常に複雑な役であったけれども、彼の存在は、非常にクラシックな、たとえば昔のホラー映画に出てきたような『フランケンシュタイン』の“怪物”と非常に通じている部分があるのではないでしょうか。僕は彼のことを悪魔だとは思っていません。むしろ彼は罪のない被害者でしょう。スウィーニー・トッドとベンジャミン・バーカーは同じ人物ですが、妻子を殺された時にベンジャミン・バーカーは実際死んでしまったんだと思っています。」

《ティム・バートン》
A.「僕も一番好きなキャラクターは?と聞かれたら、スウィーニーだね。彼が内面に秘めているものをジョニーは素晴らしい演技で表現してくれている。それがたとえどんな小さな演技だとしてもだよ。たとえば、窓から外を見つめるシーンがあるけど、ジョニーは表情だけで彼の怒りや苦しみを表現してくれているんだ。」
と、スウィーニーが持つ魅力を語ってくれた。彼らはこの作品について「特別な作品」と豪語するほど。スウィーニーに心惹かれて当然ともいえるだろう。

そして、なんといってもこの作品の見所は、ジョニーが初披露した歌声である。
ジャック・スパロウの役でも少し歌声を披露しているが、この作品で本格的にジョニー・デップの役者としての幅の広さを示すことになった。それは、オリジナル楽曲の提供者スティーブン・ソンドハイムすらも驚かせてしまうもの。会見に参加した製作者リチャード・D/ザナックは、「ジョニーの歌声が楽曲に現代的なロックの要素を盛り込むことに成功していることで、この作品に新たな魅力を刻み込んだ。」と評価をしている。

主演にジョニー・デップを抜擢したバートン監督自身も、ジョニーの歌声を初めて聞いた時は非常に驚いたそうだ。「僕はスウィーニーの歌から、彼の感情を引き出したいと思った。だから歌声から彼の感情を表すことができる俳優を起用したいと思ったし、かつ声が一般的ではない俳優を探したんだ。この役ができるのはジョニーしかいないと思ったよ。」と話す。歌うことはジョニー・デップにとっての新たな挑戦でもあった。
「僕がこの役を受けようと思った要素は、3つあります。1つめはまたティムと組めるということ、そして2つめがソングハイムの楽曲を歌えるということ、3つめは新しい役でみじめな結果を出さないということでした。この役に挑戦させてくれたティムに感謝しています。」

「ジョニーは、歌うということにチャレンジしてくれた。ソンドハイムの難しい楽曲に自分なりの感情、そして彼の個性も乗せて歌ってくれました。彼は俳優として非常に素晴らしいです。もちろん。男性としてもね(笑)。」
と、挑戦し続ける2人の可能性はどうやらとどまることを知らないらしい。

ジョニーはバートン監督を「現代稀に見るアーティスト」だと称賛した。
「僕にいつもチャンスをくれて、今まで得たことのない体験をさせてくれる。芸術をサポートしていない映画界において彼がいてくれることは尊敬に値することだ。ティムのように独創性と作家性を持っていて、かつ妥協しないということは本当に素晴らしいことだと思う。ティムが誘ってくれる限り、僕は何度でもティムと仕事をしたいと思っています。」とまだ予定にはない次回作への出演への熱意をアピールした。

タッグを組むのは6作品目と言えど、馴れ馴れしさなどまったくない彼らの仕事への熱意は計り知れない。
2人が成し遂げた“挑戦”をぜひ劇場で体感してください!

(Report:Kanako Hayashi)