●フランツ・カフカを原作としたアニメ映画『カフカ 田舎医者』の初日舞台挨拶が行われた。
「松竹で新しい試みをやることになり、山村浩二さんと何かできれば嬉しいなと思いました。」と寺西史プロデュサーは今作のきっかけを語った。

●日本が世界に誇るアニメーション作家、山村浩二監督の線描は幻想的で力強い。今作では不安と孤独をあざやかに表現し、日本人初のオタワ国際アニメーション映画祭でグランプリを受賞した。声優のキャスティングにもこだわりをみせる。活躍の幅を広い狂言一家、茂山一家を起用。主人公には人間国宝の茂山千作さんだ。「こんな言い方失礼かもしれないですが…すごくかわいらしいおじいちゃんなんです。でも一声発すると、長年芸を積んできたその声の豊かさと奥行きは誰にも真似できないものを持っていらっしゃいます。本当に出演していただいて感謝の一言です。」と語る山村監督は嬉しさで満ちている。

●女中ローザ役のキャスティングが難航する中、山村監督はラジオからの美しい声にピンときた。芥川賞作家金原ひとみさんの声だ。
「ラジオでインタビューに金原さんが答えていたんですね。そのとき初めて声のイメージを意識して聞きました。声がローザの年恰好やセクシャルなキャラクターとぴったり合っていました。自分から意識しないで発してしまう色香みたいなものを感じました。」と語った。金原さんは声優初挑戦となり、自然で繊細な声のローザもみどころのひとつのようだ。

●舞台挨拶終了後パンフレットと絵本を購入した方への山村監督のサイン会が行われ、ファン一人ひとりに笑顔で絵入りのサインをする山村監督が印象的だった。
原作をほぼ忠実に表現しているがオープニングと謎めいたラストは山村監督のイメージが追加されている。山村監督の渾身の21分、シネカノン有楽町2丁目でお試しあれ。

(Report:Hiromi Kato)