第20回東京国際映画祭の「アジアの風」部門、『壁を抜ける少年』のティーチインが10月22日に行われた。
物語は、災害に見舞われた後の世界に生きる17歳の少年が、壁を抜ける超能力を手にした事で、現実と別の世界を行き来するようになる近未来SF。主人公の少年ティエは、現実の世界でヤーホンという少女に想いを寄せる。
この日登壇したのは、ホンホン監督、ティエ役のチャン・ヨンソン、ノノ役のルー・チャシン。
台湾に続き、上映は2回目でワールドプレミアとなり、嬉しく思うと監督は挨拶。
今回が映画初出演となる、若手俳優の二人にも質問が届き、それぞれ笑顔で自身と作品についてを語った。
以下、舞台挨拶の模様。

・ホンホン監督:「私は9年間映画を撮ってきました。大学では演劇専攻で、エドワード・ヤンと出会い助監督をしたのがきっかけで映画の世界に入りました。大学卒業後、エドワード・ヤンの2作品に共同脚本として参加させて頂き、その時は自分が映画監督としてやっていくとは思わず、演劇か文学の世界でやっていくと思っていました。ところが98年、34歳の時に撮った映画で賞賛を頂き、映画の道を歩む事になりました。これまでに撮った3作は、台北を舞台に現実的な作品だったのですが、これは初めて私が取り組んだファンタジーです。ここで観ると、台北で観た時とは違い、色々なところで日本と関わりがある事を実感しました。」

・ルー・チャシン:「日本には親戚もいるので来た事があるのですが、日本語は喋れないので、今日は日本人の皆さんに映画の中で日本語を喋っているのを聞かれるのが恥ずかしかったです。
TVと映画とは、求められているものが違って、大きなチャレンジでした。
大学卒業後、この映画の脚本を初めて見て、その頃夢と現実の落差に悩んでいたのですが、やはり幼い頃からの夢は諦めないで欲しいものですね。」

・チャン・ヨンソン:「現在学生で、建築を勉強中です。最初に台本を読んでから、撮影に入るまで時間があったので、役作りについて監督と話し合いながらティエというキャラクターを作り上げていきました。
17歳という、複雑な心境を持っている役で、先輩の演技から色々と学びました。現在私は大学生なので、高校生の役とあまり差がないので、その点については大丈夫でしたが、初恋という設定なので難しかったです。」

Q&A
Q:近未来を舞台にした理由は?
ホンホン監督:「時代背景は現代より科学技術が進んでいて、現代の人間よりかなり距離があるという設定です。ティエの心の成長の過程を見せる上で、非常に重要だと思いました。」

Q:様々な場所が登場しますが、近未来という事でロケーションには苦労したのでは?
ホンホン監督:「台北の色々な場所を使って、現実の世界を描くのでは使えないような場所も使ったので、台北にもこんな場所があるのだという事を知ってほしいという意図がありました。」

Q:20年後という時の流れについては?
ホンホン監督:「ティエはそれなりに年を重ねていますが、ノノは違う時空に住んでいるという事を映したかったのです。20年後の未来でもあり、過去でもあるかもしれません。」

Q:これからチャレンジしたい事は?
ルー・チャシン:「現在、演劇に出演しています。ドラマや演劇に限らず、ノノのようにチャレンジ精神を持て色々な事に挑戦していきたいです。」

Q:2人とも演技学校には通っていたのですか?
チャン・ヨンソン:「専門に学んだ事はありません。大学との勉強とは大きく違い、想像力と世界に浸る事が必要とされます。今のマネージャーと知り合う機会があり、CMやミュージックビデオに出演して助監督と知り合い、ホンホン監督と知り合って気に入られ抜擢されました。」

ルー・チャシン:「特に学んだ事はありません。大学ではマスコミを専攻していました。この映画のカメラテストに呼ばれて、監督と今までの仕事について話しました。アフリカにTV初主演のドラマを撮影しに行って帰ってきて決定を聞いたのです。」

最後に、チャン・ヨンソンから「この映画の前に『花ざかりの君たちへ』を元にしたアイドルドラマに出演していて、日本でももう少しで放送予定なので是非観てください。」との宣伝があった。
これから活躍が期待される二人、そして新たな作風を切り開いたホンホン監督に今後とも要チェックである。

(池田祐里枝)