第20回目を迎える東京国際映画祭のコンペティション部門作品である、『ストーン・エンジェル』のティーチインが23日の上映後に行われた。この作品は、ひとりの女性が老後に行き着く境地を、それまでの人生の奇跡をたどりながら描いた人生ドラマである。
観客の鼻をすする音が聞こえ、感動冷めやらぬ空気の中、主演女優を努めたクリスティーン・ホーンさんとプロデューサーのマイケル・ホーンさんが登場。Q&Aセッションでは観客のなかから次々と質問が寄せられた。

以下、Q&A

—おふたりから、最初にひとことお願いします

マイケル・ライアンさん:以前に東京国際映画祭のコンペティションに2回参加したことがあります。日本に来るのは楽しみでした。日本の観客の方々は、熱狂的で、敬意を払って観てくださいます。こんなに多くの人がQ&Aセッションにいてくださるのは初めてなので、とても嬉しく思っています。

クリスティーン・ホーンさん:私は東京に来るのも初めてなら、北米を離れるのも初めてなんですよ。本当にすばらしい時間を持つことが出来て、皆さんにお礼申し上げたいと思います。

—この映画は有名な小説が原作になっていますが、この作品が誕生する経緯はどのようなものだったのでしょうか?

マイケルさん:監督であるカリ・スコグランドさんが私のところに原作と脚本を持って来てくれたんです。そのときには私はこの原作本を知らなかったのですが、実はこの原作はカナダでは大ベストセラーなんですよ。資金を無事集めることが出来た後はスムーズに製作が進んでいきました。

—(クリスティーンさんへの質問)エレンさん演じるヘイガーの若かりし頃を演じられましたが、エレンさんと役柄について話し合われることはあったのでしょうか?

クリスティーンさん:エレンさんのほうが私より早く撮影を始めていらしたので、彼女の役作りは私が撮影に入った時点ではできあがっていたのです。ですから、役柄については少ししか話していません。むしろ、彼女の演技を見て、それを自分の演技に反映させたという感じでした。

—(クリスティーンさんへの質問)10代の女の子から、10代の子どもの母親まで、幅広い世代を演じられていましたが、どのように役作りをなさったのですか?また、エレンさんと大変よく似ていらっしゃいますが、本当のお孫さんではないですよね?

クリスティーンさん:そうですね。15歳から43歳までの、自分の年齢より上の役も演じなければなりませんでしたから、まだ体験したことのない年齢をどうやって演じるか考えました。私自身は、妊娠したことも子どもを持ったこともありませんので、現場にたくさん質問できるスタッフの女性がいたことが大きな助けになりました。
エレンさんとは血縁的なつながりはありませんけれど、私たちは特に写真を見ると怖いくらい似ていて、お互い似ていると言っています。

—(クリスティーンさんへの質問)ヘイガーは、新婚時代は夫を愛していましたが、しだいに冷めていきますね。彼女の中には、結婚は失敗だったという意識もあったのでしょうか?

クリスティーンさん:彼女の夫に対する情熱が冷めたとは思いませんが、彼女は良家で特別な子供として育てられたので、どうしても自分の方が夫より優位だと思ってしまうところがあるんですね。そこに彼女の葛藤があるのだと思います。

観客のお一人が、感極まった様子でご自身の経験と、「この映画にめぐりあうことが出来て、幸せです。多くの人にこの映画を見てもらいたい」と想いのたけを語ると、クリスティーンさんも心動かされた様子で、「こういった心の交流が出来て女優冥利につきます。本当に女優をやっていて良かったと思う瞬間です」マイケルさんは「大変嬉しく思っております。ありがたいです。また是非次の上映にもいらしてください」と、言葉をかけていた。

人は皆しだいに老いていくという現実を見つめつつも、人生の忘れていたすばらしい瞬間を喚起させてくれるような作品である。

(Report:Akiko INAGAKI)