第20回東京国際映画祭animecsオープニング上映で『カフカ 田舎医者』が選ばれ、日本初お披露目上映が行われた。

舞台挨拶に登場した山村浩二監督は、
「本日は初めて皆さんに見ていただける機会なので、嬉しいけれどちょっと緊張してます。」
そして舞台挨拶、上映後に行われた山村浩二監督と、池内紀さんとの対談では、「カフカがアニメーションになったことは驚きと共にとても喜ばしいこと。でも、こういうものが生活にむすびつくかが心配で。(笑)」とドイツ文学者の池内紀さん。
山村監督とは、本日初対面だったものの二人は終始なごやかムード。

「訳者は原作を何度も読むからイメージが自分の中でなんとなくできあがっている。具体的に画になってあらわれた山村さんの作品とは全く違うけれど、見ているうちにイメージが同じになっていくというのが不思議でしたね。自分の持ってた仮のイメージを映像化してもらえた、という気持ちです。」と話した。

声の出演には人間国宝・茂山千作をはじめとする狂言師の起用。「日本しかない感覚の能狂言の黒子(くろこ)のアイデアからきており、可笑しみを表現できる“狂言”と“カフカ”を結び付けるアイデアが出てきた時にこれは面白くなるぞ」と山村監督は確信できたという。
池内さんも「狂言スタイルを見た時、予想できなかったし、これは成功したなと思いましたね。」

金原ひとみさんは、偶然ラジオで声を耳にしてオファーしたという。「原作がカフカということもあったせいか、面白がってくれ、初めての声の出演を快諾してくれました。」

山村監督は、どんな気持ちでこの作品を製作されましたかという質問に対して「カフカが生前、友人を楽しませよう、笑わせようと思ったのと同じような気持ちで僕もこのアニメーションを作りたいと思ったんです。」と、コメントし、それに対して池内さんは「今まで誰一人その解釈をしていなかった、カフカにとって最良の解釈です」と気持ち良さそうに笑った。
山村監督曰く、「カフカの短編はエンターテイメント性が強いので、構えず楽しく見て欲しいですね。」と語った。