平凡な主婦が背徳的な世界の闇に墜ちていく…人間誰もが持っている欲望を映し出した人間ドラマ映画『M』が初日舞台挨拶を迎えた。舞台に廣木隆一監督、美元、高良健吾、大森南朋が現れた。

●存在感のある身長173cmですらりと伸びる手足の持ち主、美元。体当たりで主人公の小川聡子の心の揺れを演じきった。
「肌を露出するのは大変ではなくて、きちんと聡子になっているのかすごい緊張の中の現場でした。」

●高良健吾も撮影現場の話は言葉少なで苦笑いを浮かべた。「現場は…つらいですし、泣きました。事故りたいなぁ、事故らないかなぁと思っていました。(笑)」
このままバイク事故で死んでしまおうかと思うほど追い詰められたと言うことです。と高良の隣に居る大森南朋が通訳した。

●大森自身の撮影現場は?との質問に「居心地が悪かったですね(笑)。廣木さんの現場はいつも緊張感が漂っていて、若い二人(美元、高良)がより緊張感を高めていて。気合と覚悟みたいなものが二人から出ていて印象的でした。」
大森も出演している田口トモロヲも廣木監督作品では常連だ。「廣木さんの撮る世界が好きで、ずっと尊敬し続けています。大好きな映画監督の一人です…うさんくさくなってきちゃったな(笑)」

●“若い二人”も廣木監督について語った。美元は「言ってくださることすべてが的を射ていました。だから悩んでしまうんです。演技のことを監督に聞いても“聡子はお前だろう”って。でも私たちは監督から“OK”をもらえますが監督にはそれがありません。きっと監督のほうが大変な戦いをしているのだろうと思いました。」と本人を目の前に語り、照れ笑いを浮かべた。高良は「演技すべてが見抜かれているんですよね。それがプレッシャーでもあり、安心でもありました。」と言葉を選ぶように語った。

●出演者の言葉を「手に汗握っちゃいますね。(笑)」と廣木監督。「何このラスト?ってみんな思うと思います。物語を作っている僕らは一つの結末を本当は出さないといけないんですけど、見ているお客さんにそれを委ねたいと思います。」と作品について語った。

見終った後、どんよりと一つの結末を出す。そんな映画も秋の夜長にはいいかもしれない。

(Report:Hiromi Kato)